2011年3月31日(木)「しんぶん赤旗」

侵略美化2教科書 合格

自由社・育鵬社版「自衛戦争」と描く


 文部科学省は30日、2012年度から使われる中学校と高校の教科書検定の結果を発表しました。侵略戦争を美化する立場の歴史教科書が2種類合格しました。

 合格したのは「新しい歴史教科書をつくる会」(藤岡信勝会長)が主導した自由社の歴史教科書と、同会から分裂した「日本教育再生機構」(八木秀次理事長)が主導した育鵬社(扶桑社の子会社)の歴史教科書です。両社がそれぞれ申請した公民教科書も、合格しました。

 自由社版は歴史237件、公民139件、育鵬社版は歴史150件、公民51件の検定意見がつきました。

 両社の歴史教科書は「この戦争を(は)『自存自衛』の(ための)戦争(である)と宣言した」と共通した文言で、日本が起こした戦争を侵略戦争ではなく自衛戦争であったように描こうとしています。

 さらに「戦争初期のわが国の勝利は、東南アジアやインドの人々に独立への希望をあたえました」(育鵬社、自由社もほぼ同文)、「『大東亜共栄圏の建設』を戦争目的とした」(自由社)と、日本の戦争がアジアのためであったかのように強調しています。

 今回の検定は12年度から新学習指導要領が全面実施される中学校の全科目と、同年度から新指導要領が1年前倒し実施される高校低学年の数学・理科が主な対象。

 中学教科書は108点の申請がありましたが、1社の歴史・地理・公民各1点が申請後に発行を取りやめ、不合格になりました。高校教科書は91点の申請があり、理科の新設科目「科学と人間生活」などで3点が不合格になりました。


民主党政権の責任重大

宮本議員が談話

 日本共産党国会議員団の宮本岳志文部科学部会長は30日、今回の中学校歴史教科書の検定結果について次のような談話を発表しました。

 一、本日、太平洋戦争を「自存自衛」の戦争と描くなど侵略戦争を美化する二つの中学歴史教科書が検定合格となった。侵略戦争と植民地支配への反省とその誤りの清算は、戦後の日本社会の出発点であり、国際社会の一員としての絶対条件ともいうべきものである。それを否定する教科書を認めた政府の責任は重大である。自公政権と変わらない対応をおこなった民主党政権は、この点でも国民の期待を裏切ったといわざるをえない。

 一、日本の過去の誤りと誠実に向き合い、その反省の上に平和と民主主義を理念とする憲法があることを学ぶことは、子どもたちが主権者として育つために不可欠である。わが党は、歴史教科書問題をはじめ、侵略戦争美化の風潮を克服するため、広範な国民とともに力をつくすものである。





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