2011年3月30日(水)「しんぶん赤旗」
11年度予算は成立したが…
未曽有の危機に対応できるのか
2011年度予算が29日、成立しました。東日本大震災からの復旧・復興支援が焦眉の課題。社会保障の拡充、防災対策の充実が求められています。11年度予算が国民のくらしと安全を守る予算となっているのか、検証してみました。
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復興予算どうする
大震災の事態反映されず
戦後未曽有の大震災救援と原発事故の危機をどう打開するのか、その災害からの復興にどう国の総力をあげるのか―この課題が問われているときに、大震災前の予算案をそのままにしていいのかが問われました。
ところが、菅内閣は救援・復興に対する基本的な考え方を示すこともないまま、ムダ遣いをそのままにした来年度予算案に固執し、成立させました。
しかも、来年度予算は、高齢者や障害者の年金を削減、一人親家庭の児童扶養手当も削減するなど、国民の暮らしに冷たい内容をそのまま残しています。
財源についても、2011年度予算は、一般会計の総額92兆4116億円の約半分を税外収入と借金に依存します。野田佳彦財務相は、11年度予算のあり方は「1年限りだ」とのべ、「税制の抜本改革をやったうえで安定財源を確保する」と述べています。消費税増税に道を開く予算です。
震災を受けて、菅首相は「先送り」も選択肢のひとつだと表明していますが、与謝野馨経済財政担当相は、「(案を示す)6月のスケジュールを守るよう最大限努力する」(22日)と言及しています。
また、地方を支える農業、地域経済、国土と環境を壊す環太平洋連携協定(TPP)については、「優先順位が変わってくる」(枝野幸男官房長官)というように、先送りも示唆していますが、断念したわけではありません。
ムダ遣いそのまま
法人税・米軍思いやり…
一刻も早い震災の復興のための財源が焦点になっているときに、予算は旧自公政権以来のムダ遣いを温存し続けています。
法人税率の5%引き下げ(1兆5000億円)と証券優遇税制の2年延長(5000億円)については、法人税引き下げを求めてきた日本経団連会長が「やめてもらって結構」と発言してから、ようやく言及。菅直人首相は29日の参院予算委員会で「(撤回も)一つの選択肢だ」と答弁しました。今後の対応が問われます。
今後5年間で1兆円の「思いやり」予算(1858億円)など、米軍関係経費にも計3189億円を盛り込んでいます。震災による全半壊、流失した計2万6513戸の住宅再建の補償に充てれば、1戸当たり平均1200万円の支援が可能です。
太平洋側の14港湾が津波で甚大な被害を受けるなか、京浜・阪神港に水深16メートルの巨大岸壁をつくる巨大事業に327億円を計上しています。20年までに5500億円という計画です。
今後、原子力発電所14基を新増設するエネルギー基本計画に基づき、原発関連予算に4000億円以上を計上しています。
政党が税金を山分けする政党助成金(320億円)もそのまま(日本共産党は受け取り拒否)。民主、自民、公明は国会議員歳費の削減を主張していますが、削減額は20億円程度。政党助成金の撤廃は不可欠です。
共産党 抜本組み替え求める
大企業の内部留保 活用を提起
日本共産党は、戦後未曽有の災害からの復興に国の総力をあげて取り組むことを主張。予算についても、11年度予算を抜本的に組み替える大規模補正をおこなうべきだと提案しました。
財源は、法人税減税や証券優遇税制の延長など2兆円におよぶ大企業・大資産家減税の中止や、高速道路無料化と子ども手当の上乗せの中止、米軍の「思いやり」予算やグアムの米軍基地建設費の中止、不要不急の大型公共事業の中止、原発の建設・推進経費の中止、政党助成金の撤廃などを行うことで、年間5兆円程度を確保することができると提案しています。
さらに、244兆円にのぼる大企業の内部留保を、復興と被災地域の経済再建に活用する手だてをとることを提起。その一つとして、従来の国債とは別枠で「震災復興国債」を発行し、大企業に引き受けを要請するように求めています。
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