2011年3月28日(月)「しんぶん赤旗」

崩れた「安全神話」

米原子力空母も

その時、艦は大揺れ、岸壁から離れた…


 東日本大震災による福島原発事故は、「日本では大量の放射性物質が放出されるような重大事故は起こらない」という「安全神話」が、文字通り、実体のない作り話だったことを、極めて深刻な形で証明しました。同時にそれは、米原子力空母を日本に配備するために振りまかれてきた「安全神話」の虚構性も浮き立たせています。


日米両政府は事故想定せず

 米原子力空母ジョージ・ワシントン(GW)は東日本大震災が発生した際、毎年1〜5月に行われている定期修理のさなかで、母港の米海軍横須賀基地(神奈川県)に停泊していました。

 「地震直後に海面が6フィート(約1・8メートル)下がった。揺れが非常に激しかったため、艦は岸壁から引き離された。それは町が動いているようだった」

 米軍準機関紙「星条旗」11日付(電子版)は、震災発生時の、GWの様子をこう報じました。米海軍は「施設や艦への重大な損害はない」としていますが、「星条旗」の報道は横須賀基地でもかなりの影響があったことをうかがわせます。

 GWは21日、福島原発事故の悪化を理由に、同空母修理のためピュージェット・サウンド海軍造船所(米ワシントン州)から派遣された労働者450人を乗せて出港。現在、日本海にいます。

 日米両政府はこれまで、米原子力空母の「安全性」を繰り返しふりまいてきました。

 原子力空母の横須賀母港化のため、米海軍は「合衆国原子力軍艦の安全性に関するファクト・シート」を発表(2006年11月)。「炉心から出る放射能が周辺の環境に放出されるというような可能性は極めて低い」などと宣伝しました。

 日本政府も「原子炉事故(炉心の損傷)、艦外への放射性物質漏出は極めて想定し難い」(外務省作成のパンフレット)と断言してきました。

市民団体が警告

 今月13日、横須賀市内で開かれた「危険な原子力空母の定期修理を検証する市民シンポジウム」では、緊急決議が上がりました。

 これまで、原子力空母の横須賀母港化に反対する市民団体などは、大地震が東京湾を直撃すれば、空母の原子炉が津波による引き潮で冷却できなくなり、陸上からの電力・水などの供給もストップし、艦内の安全装置も作動しなくなる危険を指摘。炉心溶融、爆発による防護壁破壊、放射性物質の放出という深刻な原子炉事故が引き起こされることを警告してきました。

 実際、横須賀は、1923年の関東大震災で、甚大な被害を出しています。(『東京湾の原子力空母―横須賀母港化の危険性』)

 緊急決議は、今回の福島原発事故は、起こり得ないとされてきた事故が、原子力空母でも発生し得ることを示したと指摘。原子力空母の場合、日本政府が安全審査も監督も一切できないことに触れ、原子炉の「安全性」について日米共同で検討を行い、情報公開することなどを求めました。

地方選の争点に

 日本共産党は、原子力空母の原子炉が「軍事機密」の厚いベールに包まれ、一般の原発よりも危険なことを指摘してきました。

 原子力空母の母港化をこのまま続けていいのか―。これは、今たたかわれている神奈川県知事選や、県議選、横須賀市議選の大きな争点でもあります。(榎本好孝)





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