2011年3月28日(月)「しんぶん赤旗」

主張

米軍「思いやり」予算

大震災のさなかにやることか


 東日本大震災の被害が甚大で巨額の救援・復興予算が必要になっているのに、政府が在日米軍のための「思いやり」予算を今後5年間出し続ける、特別協定を成立させようとしていることに批判が広がっています。

 民主党と、自民、公明両党は今週前半にも特別協定を衆議院で審議・可決し、30日後には自然成立させる構えです。大震災の救援・復興に国の総力をあげるべきときに、在日米軍への「思いやり」予算を押し通すなど、本末転倒そのものです。

5年間でほぼ1兆円

 東日本大震災による被害者は死者が1万人を超え、助かった人たちの多くも避難所や遠方での苦しい生活を余儀なくされています。農業や地域経済も大打撃を受けています。いま政治がやるべきことは、国の総力をあげた被災者支援と復興へのとりくみです。民主党は、米軍が震災支援にあたっていることまで特別協定を成立させる理由にしますが、大震災なら当然やるべき支援と「思いやり」予算を絡めること自体間違いです。

 米軍への「思いやり」予算はもともと在日米軍の活動について定めた地位協定にも根拠がなく、日本が不当に負担させられているものです。全廃が当然です。

 今回の特別協定で日本が負担させられるのは基地施設建設費や訓練移転費、光熱水料、訓練移転費、基地で働く日本人従業員の給与負担ですが、これらはすべて、本来地位協定では米側の負担となっています。

 しかも今回の特別協定は、2010年度の「思いやり」予算の水準である1881億円を5年間続けることを日本に義務付ける屈辱的なとりきめです。総額では、5年間で1兆円近くにもなる巨額の負担です。単年度ごとに編成される予算の原則に反し、財政をしばることになります。

 「思いやり」予算は米国経済の危機を理由に、自民党政府が1978年から始めたものです。民主党政権もこれを踏襲した結果、支出総額は6兆円近くにもなっています。そのうえ今後5年間にわたって1兆円もの巨費をつぎ込むのはもはや許されません。

 日本が給与を負担する日本人基地従業員には、バーテンダーや宴会マネジャーなど米軍の娯楽用要員が数多く含まれています。米軍の遊びのためにまで血税を投入する国は世界のどこをさがしてもありません。

 米軍は「思いやり」予算以外にも、国有財産の提供などで年間4千億円もの恩恵を日本から受けています。本来日本が負担する義務はなく、廃止するのが当然の「思いやり」予算のための特別協定を成立させなかったからといって、米側にあれこれいわれる筋合いはありません。

全廃し国難打開に回せ

 政府として東日本大震災の救援と復興にあらゆる力を結集するためには、「思いやり」予算だけでなく、大企業のための法人税減税や不要不急の大型開発などの予算、もともと憲法違反の政党助成金などを見直すのが当然です。

 全廃が求められているときに、年度末の短期間にまともな審議も行わず、在日米軍のための「思いやり」予算の特別協定をさっさと決めてしまおうとするのは、国難ともいうべき大震災に対する姿勢さえ疑わせるものです。





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