2011年3月27日(日)「しんぶん赤旗」

戦後未曽有 大災害下の来年度予算

ムダ遣い このままでいいか


 死者・行方不明者2万7千人を超す東日本大震災と、多数の避難者を出している福島第1原発事故―戦後未曽有の危機の救援・復興には巨額の費用を要する文字通りの国家的プロジェクトが必要です。政府も現時点での大震災被害総額を16兆円から25兆円と見積もり、さらに増えると予想しています。それにもかかわらず、震災前からのムダ遣い計画はそのまま。決定も間近に迫るなか、このままでいいのかが問われています。

2兆円

大企業・大資産家減税

バラマキやめ復興財源に

 大震災の救援と復興に巨額の費用が必要なときに大企業に減税か―こんな声が大きくなっています。政府が2011年度予算案で法人税を5%引き下げ、1兆5千億円も減税しようとしているからです。株の配当や売買で得た所得への課税でも、20%から10%に軽減している優遇税制を2年間延長しようとしています。

 大企業・大資産家への減税は約2兆円に上ります。これだけあれば、救援と復興にどれだけ役立つか、だれしも思うことです。

 日本共産党は、こうした大企業減税をやめ、復興の財源に回せと主張。佐々木憲昭衆院議員は25日の財務金融委員会で政府を追及しました。野田佳彦財務相は「ご指摘のものも含めて議論する」と減税撤回の可能性を示唆。政府に法人税引き下げを執ように迫ってきた日本経団連の米倉弘昌会長でさえ、「法人実効税率の引き下げも(見直しの)検討対象になるだろう」(「日経」3月24日付)と述べざるをえなくなっています。

 大企業の内部留保244兆円の活用とともに、大企業・大資産家へのバラマキは震災対策に回すべきです。

5500億円

巨大港湾開発

被災した港湾・漁港の復旧こそ

 東日本大震災では青森県から茨城県にかけての港湾14港が壊滅的被害を受けました。岩手県大船渡港は港全体が地盤沈下し、津波防波堤は一部を除き水没。宮城県石巻港も荷さばきヤードが液状化し舗装に亀裂や陥没が起きています。

 これらの港湾は物流の拠点であり、地域経済にとっても重要な役割を担っています。それだけに港湾・漁港の復旧が急がれます。

 ところが政府がやろうとしているのは、京浜港や阪神港に水深16メートルの巨大岸壁をつくるため2020年までに5500億円をつぎ込む「国際戦略港湾」事業。11年度予算案で327億円を計上しています。

 日本共産党の穀田恵二議員は25日の衆院国土交通委員会で「国際戦略港湾につぎ込む予算は災害復旧に回すべきだ」と求めました。

 大畠章宏国交相は「日本の経済力を衰退させては困る」と答弁しましたが、巨大港湾開発に固執する姿勢が問われます。

3189億円

「思いやり」など米軍経費

全半壊1戸1200万円支援可能に

 政府は今週にも、11年度予算案を成立させようとしています。しかし、予算案には、▽日米安保条約・地位協定上も負担義務のない米軍「思いやり」予算1858億円▽在沖縄米海兵隊の移転を口実にした米領グアムでの米軍基地建設など「米軍再編」関係経費1230億円▽沖縄の米軍基地・演習を移転=たらい回しするSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)関係経費101億円―の計3189億円が盛り込まれています。

 一方、今回の大震災による建物被害は、全壊1万8783戸、半壊6565戸、流失1165戸の計2万6513戸(政府発表、26日午前8時現在)。現行の被災者生活支援法では住宅全壊でも支援額は300万円で、大幅な引き上げが求められます。

 前出の米軍関係経費を住宅再建の補償に充てれば、1戸当たり平均1200万円の支援が可能になります。

320億円

政党助成金

減額でなく撤廃を

 11年度予算案が成立すれば、4月にも政党助成金の第1回分の交付(約80億円、年総額約320億円)があります。原資は国民1人あたり250円の税金です。

 受け取りの申請をした政党に税金を山分けする政党助成金は、阪神・淡路大震災がおきた1995年から実施され、日本共産党以外の全政党が「民主主義のコスト」などといって自らの懐に入れ、蓄財にしてきました。11年の政党助成金については民主、自民、公明、みんな、社民、国民新、たちあがれ日本、新党改革、新党日本の9党が受け取りの申請をしています(1月)。

 震災復興の財源が問われるなか、公明党は「国会議員歳費を3割、来年度1年間削減すべきだ」(山口那津男代表)と主張していますが、その削減額は45億7000万円で、政党助成金年総額の1割強にすぎません。

 民主党の岡田克也幹事長は政党助成金の削減などに言及していますが、救援・復興に向けた政治のあり方が問われているいま、減額などにとどめるのでなく、撤廃し、復興財源に充てるべきです。

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