2011年3月25日(金)「しんぶん赤旗」

避難所支える党議員

自らも家失う 看護師37年 経験生かし健康チェック

岩手・陸前高田市議 大坪 涼子さん


 岩手県陸前高田市の米崎小学校避難所。「みなさーん、お昼の準備ができました。あたたかいうちにどうぞ」。まかない・衛生係の大坪涼子さん(日本共産党市議会議員)の声が響きます。「いっぱい食べなんよ」(食べてください)。気さくに声をかける大坪さんに、「いつもありがとう」と食事の列に並んだ人たちから笑顔が返ってきました。 (秋山強志)


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(写真)「食事の準備ができました」と被災者に声をかける大坪市議=22日、岩手県陸前高田市の米崎小学校避難所

 今回の東日本大震災の大津波は、10歳のときチリ津波(1960年)を体験している大坪さんにとっても想定外のものでした。

 「涼子ちゃんのところなら安心だ」。避難場所にも指定されていた自宅周辺には、激しい揺れの後、近所の人が車を止めにきたほどでした。ところが庭から海をのぞむと、津波が堤防を越え、バキバキと音を立てながら近づいてくるのが見えました。

 「ただ事ではない」。大坪さんは、娘と一緒に91歳の父親のわきをかかえて、高いところへと必死に走りました。

「悔しい」

 その途中、何人かの人たちが次々と波にのみこまれていくのを目撃しながら、助けることもできずにいました。大坪さんの、おいの妻も目の前で流されました。「助けたいと思ったけど手が届かなかった。悔しい」。唇をかみます。

 自宅も車も流された大坪さんは、避難所に身を寄せました。議員としての顔の広さ、37年の看護師経験をかわれて、避難所の責任者に推されます。

 ほかの看護師経験者とも協力して避難者の排せつの状態をみながら健康チェックをしたり、硬いマットの上での寝起きを強いられて疲れがたまってきた被災者にストレッチ体操を呼びかけたり…。ボランティアに来てくれた人や救援活動の窓口になるなど、1人で何役もの活動をこなしています。

すぐ対応

 津波から10日以上が過ぎ、夜中にせきこんだり、体調をくずしたりする人も少なくありません。「ちょっと具合悪い人がいるんだけど」と声がかかれば、夜中でもすぐ対応します。

 「共産党の人だから」と距離を置いてきた女性(61)も、いまでは「涼子ちゃん」と親しみを込めて呼びます。「涼子ちゃんも、身内を亡くしているのに、そんなそぶりは一つも見せない。避難所を第一に考えて行動していますね」

 大坪さん自身、まだ気持ちの整理はついていません。「夜中に不安で目が覚めることもあります。でも、ここにいる人たちはみんなだれか身内を亡くしています。だからこそみんなで『私たちは被災の仲間だよね』『がんばらなきゃね』と口に出していいあうようにしているんです」

 22日には、避難所を、土足禁止にするための大掃除をしました。リーダーのよびかけに、お年寄りも子どもたちも、雑巾やほうきを手に、次々に掃除に参加。みんなで協力しあい、避難所での生活を支えあっています。

 その中心にいる大坪さん。「みんなが私を頼ってくれる。それが力になっています。ここにいる人たちを勇気づけて、毎日を過ごしてもらい、復興にむけての力を蓄えられる環境をつくっていくことが今の目標です」





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