2011年3月25日(金)「しんぶん赤旗」
主張
食料基地の震災
安心・安全な供給へ対策急げ
東日本大震災と東電福島第1原発の重大事故は、国民の食料供給と生産にも、甚大な被害と不安をもたらしています。
農地や水路、漁港や漁場など生産基盤が破壊されています。被災地だけでなく、広範な地域で店頭から米がなくなるなど、食料流通をめぐる混乱もおきました。原発事故による放射性物質の拡散は、農産物や水道水を汚染し、野菜、牛乳の出荷停止など、生産者はもとより、消費者や流通業界にもきわめて重大な影響を与えています。今後、海水の汚染による水産物への影響も懸念されます。
生産・供給体制の復興を
被災者救援に全力をあげるとともに、原発からの放射性物質放出による被害を防ぐことは、いままさに最優先の課題です。放射性物質による汚染のため、国の暫定基準を上回る値が検出された野菜などの農産物や食品の流通を規制するのは当然ですが、その際、生産者への補償や消費者の混乱を防ぐ対策とともに、今後、生産を維持・継続できる見通しが持てるようにすることが不可欠です。
大震災で大きな被害がでた岩手、宮城、福島の3県は、米や野菜、果樹、畜産の主要産地であり、東北地方は首都圏などへの食料供給基地です。被災地はもとより国民の命を守るためにも、安全な食料を安定的に供給する、生産、流通体制をつくることが緊急に求められています。
政府は、放射性物質による汚染状況はもちろん、米など食品の在庫や流通・価格などの情報を国民に知らせるとともに、今年の生産対策を抜本的に見直す必要があります。被災地では津波で海水をかぶった水田が広大な面積にのぼっています。このままでは今年の米作りも困難です。作付けを目前にした米の生産目標を、全国的に見直すことは緊急に必要です。
同時に、農地や漁港などの生産基盤、集荷・加工施設などの被害状況を把握し、復旧の取り組みを文字通り国家的プロジェクトで推進することが急がれます。
大震災の直後から、消費地でもスーパーなどから米やパン、麺類など、主食の食料品が姿を消す事態がおきました。消費者の不安が一つの要因であることは否定できませんが、大手量販店などの効率優先、もうけ本位の体制が大災害にあわないことも示しています。
大手量販店は在庫を極力持たないため、停電やガソリン不足で精米や輸送が滞ると、手だてがとれません。それにたいし、自力で米の集荷・精米を行っている専門店は、一定の在庫をもって運営しています。精米や輸送を民間まかせにせず、せめて主食ぐらいは政府が流通と価格の安定に責任を持つ必要性を浮き彫りにしています。
生産地が条件生かして
食料の生産体制を立て直すうえで、国の責任を強化するとともに、生産体制そのものも大産地・大量流通を基本にしたものから、生産地が自然条件を生かしながら、小産地もふくめ多様な生産を維持・拡大する方向に転換することも重要です。それによってこそ大災害にも柔軟に対応できることになります。
緊急で最優先の課題として救援と復興に全力をあげるなかで、国内農業を破壊する環太平洋連携協定(TPP)への参加検討を、直ちに中止するのは当たり前です。