2011年3月25日(金)「しんぶん赤旗」
農業 続けられるのか
出荷できず収入途絶えた
水・土壌から放射性物質 福島・飯舘村
村長「頭越しの国発表 おかしい」
福島第1原発の事故で水道水と土壌から放射性物質が検出された福島県飯舘村。兼業農家も含めれば約7割が農業に携わる同村で、農民が不安を募らせています。(柴田善太)
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「今が出荷の最盛期なのに全く出荷できない」―専業農家の男性(62)はビニールハウスで実った畑ワサビをなでるようにして言います。
畑ワサビは1キロ1500〜3000円、ハウス一つ分で約90万円。男性の主要な収入源です。福島第1原発の事故で出荷が止まりました。酪農も手掛けていますが、来月予定されていたセリが開かれるかどうか分かりません。
「収入が途絶えた。新たな作付けもできず、様子を見ながら畑の手入れを続けるしかない」と話します。
男性の長男(36)は7年前に農業を継ぐために飯舘村に戻ってきました。今は県外に一時避難しています。
「周りの農家も頑張って後継ぎができたところが比較的多い。でもこんな状態では、農業が続けられるかどうか…」
飯舘村は一部が福島第1原発の30キロ圏内にあり「屋内退避」の範囲に入ります。20日に厚生労働省が同村の水道水1キログラムあたり965ベクレルの放射性ヨウ素を検出したと発表。21日には文部科学省が同村の土壌から高濃度のセシウムとヨウ素が検出したと発表しました。同村にも県にも何の連絡もないままの発表でした。
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菅野典雄村長は「大災害の非常時は国と自治体の信頼と連携が大切なのに、なぜ頭越しの発表になるのか理解できない」と憤ります。
また、東京電力に対して同村長は「50年、100年とかけて築いてきた農業を台無しにする事態になりかねない。原発はただちに廃炉して補償など企業の社会的責任を果たすべきだ」と話しました。
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