2011年3月24日(木)「しんぶん赤旗」
被災者支援、いっせい地方選挙勝利 全国決起集会
志位委員長の報告
23日に日本共産党本部で行われた被災者支援、いっせい地方選挙勝利 全国決起集会への志位和夫幹部会委員長・東日本大震災対策本部長の報告は次の通りです。
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みなさん、おはようございます。全国で奮闘されている同志のみなさんに心からのあいさつをおくります。とりわけ被災地で、自ら被災しながら、日夜、懸命に救援のための奮闘をされている同志のみなさんに熱い連帯のあいさつをおくります。(拍手)
3月11日に発生した東日本大震災によって、現在までに判明しているだけでも9千人を超える方々が亡くなられました。その中にはわが党の同志もおられます。私はまず、被災されたすべての方々に心からのお見舞いを申し上げるとともに、亡くなられた方々とそのご家族に深い哀悼の気持ちを申し上げます。犠牲となった方々に黙とうをおこないたいと思います。ご起立ください。黙とう。黙とうを終わります。ご着席ください。
今日、全国決起集会をもったのは、東日本大震災という未曽有の災害にたいして日本共産党としてどう立ち向かうか、明日から開始されるいっせい地方選挙をどうたたかうかについて、全国が心一つに頑張り抜く意思統一をおこなうことにあります。
一、東日本大震災と日本共産党の活動の現状について
国難というべき戦後最大の大災害
まず大震災と日本共産党の活動の現状について報告します。
東日本大震災は、文字通りの国難というべき戦後最悪の大災害となりました。亡くなった方は現時点で9千人を超え、行方不明の方は1万3千人を超えました。被災地域は、前例がないほどの広範囲におよび、二十数万人の方々が、不自由な避難所での生活を続けておられます。地震と津波による被害で、少なくない太平洋沿岸の町がそっくり壊滅し、建物などの物的被害は、なお全容がつかめないほど甚大です。
くわえて東京電力福島第1原子力発電所の事故は、なお予断を許さない危険な状態を脱していません。原発事故によって周辺に住む多くの方々は、故郷の今後への不安をもちながら退避を強いられています。
災害の最前線のきわめて困難な条件のもとで、多くの行政関係者、専門家と技術者、医師・看護師・福祉施設職員のみなさんなどが、不眠不休で被災者救援と原発危機対応にあたっておられます。私は、それらのすべての方々の努力に心からの敬意を表明するものであります。
党中央委員会と国会議員団のとりくみ
日本共産党は、3月11日、私、志位を本部長、市田忠義書記局長を本部長代理、穀田恵二国対委員長を事務局長とする「東日本大震災対策本部」を設置したのにつづき、3月16日、宮城県仙台市に、高橋ちづ子常任幹部会委員・衆議院議員を本部長、太田善作常任幹部会委員を副本部長とする「現地対策本部」を設置し、党として可能なあらゆる活動にとりくんできました。
わが党は、この間の党首会談、「各党・政府震災対策合同会議」などで、被災者にたいする燃料、水、食料、情報、医療などのすみやかな支援をおこなうこと、原発事故対策にたいしては原子力安全委員会とあらゆる専門家・技術者の知恵と力を総結集し危機の打開をはかること、正確な情報を国民に知らせ健康を守るための万全の対策をとることなど、政府にたいして一連の要請をおこなってきました。北海道、東北、関東などを地元とする党国会議員は、被災地に伺い、被災者の状況と要望をお聞きし、それを政府に提起・実行を求める仕事にとりくんできました。
被災地の党組織の奮闘――日本共産党の立党の精神を体現
被災地の党組織、党支部と党員、地方議員のみなさんは、自ら被災している非常な困難ななかでも、被災住民のみなさんと力をあわせ、懸命な救援活動にとりくんでいます。
地方議員の同志を先頭に、避難所訪問にとりくみ、被災者と避難所の運営にあたっている方々の要望を聞き、困難な避難所生活の改善のために日々奔走しています。避難所に移れず自宅などで生活されている高齢者や一人暮らしの方々への訪問と支援の活動も、重視してとりくんでいます。家もコミュニティーも破壊されたもとで被災者に声をかけるとりくみを重視し、せきを切ったようにぶつけられるさまざまな不安や苦しみを受け止め、激励・救援する活動をすすめています。温かいおにぎりや炊き出しなどの支援も、被災地の各地でとりくまれています。
いま被災地では、燃料、水、食料、医療品、衛生用品、ミルクなど物資の不足が深刻です。ガソリン不足などで、支援物資が避難所まで届かないという問題があります。「現地対策本部」では、各県の実情をふまえつつ、岩手、宮城、福島に支援物資受け入れセンターを設置し、支援物資を被災者まで届ける仕事を開始しています。青森、秋田、山形などの近県で、地元の党組織は、県労連、農民連、新婦人などと協力し、共同センターを設置し、コメ、リンゴ、牛乳、灯油などを、被災地の避難所まで輸送する活動を始めています。全労連をはじめ全国の団体支援も始まっています。全日本民医連は、全国から医師・看護師を含む700人以上の医療スタッフを交代で現地に派遣し、被災者の命をつなぐために奮闘しています。
「現地対策本部」から寄せられた被災地の同志の奮闘の一部を紹介したいと思います。
宮城県のある保育園の元園長の同志は、津波が来た瞬間に近所の保育園に駆けつけ、子どもたちを間一髪で避難させ、一晩中子どもたちとともに過ごし、救助されて避難所に行っても、子どもたちと一緒に行動し、避難所に保育所をつくるなど、子どもたちの命を守り抜くために大奮闘をしています。
岩手県の陸前高田市の戸羽市長は、夫人が行方不明という悲しみのもとで、被災者救援の陣頭指揮をとっておられますが、わが党市議は、市職員のみなさんとともに、市長を支え、「職員の3分の1が安否不明」というもとで、行政の責任を果たすために奮闘しています。党市議は、津波にわが家を流され、目の前で親戚も流されるというもとで、自ら避難所の事実上の責任者を引き受け、看護師の経験も生かして体操をよびかけ、みんなの体調管理に心をくだくなど、懸命の奮闘を続けています。多くの市職員は、被災以来、着替えもせずぬれたままで、靴の上にスーパーのゴミ袋をゆわえて、必死の救援活動にとりくんでいるとのことであります。
福島県の南相馬市のわが党市議は、自ら大きな被災をしながら、地震、津波、原発事故被害という複合災害に苦しむ市民の命を守るために奮闘しています。桜井市長が被災地の窮状を訴えるなかで、燃料補給のためのタンクローリーが南相馬市に入ることになった。ところがせっかく入ることになったタンクローリーが、原発事故の状況をみる中で、途中で引き返してしまうという事態が起こりました。その状況を聞いた党市議は、会津若松の親戚から特殊免許をもった人を探し出して、タンクローリーの運転を頼み、南相馬市まで輸送させたという報告も寄せられております。
こうした被災地での献身的な奮闘が、いま無数にとりくまれています。きわめて困難な状況下にある被災地での同志たちの奮闘は、国民の苦難軽減のために献身する日本共産党の立党の精神を体現したものであり、また、草の根で国民と結びついた日本共産党ならではの活動であり、私は、全国の党組織のみなさんが、この頑張りに固く連帯して奮闘することを強くよびかけたいと思います。(大きな拍手)
全国の党組織の活動――国民的な救援活動の先頭にたって
全国の党組織は、大震災の直後から、被災地救援の活動に立ち上がっています。救援募金活動は、短期間に2億5000万円を超えるとりくみになっています。
いま多くの国民は、連日報道される被災地の状況を見て、「自分も何かをしたい」という強い思いをもっています。10代、20代の若者が、わが党の募金活動をみて、飛び入りでマイクで訴えたり、募金箱をもつなどの行動をおこなっていることが、全国各地から報告されています。関西のある大学の学生10人が、わが党の事務所を訪問し、「救援募金をやりたい。募金の受け皿になってほしい」と相談にきました。最初は他の党に相談してみたが、「対応できない」といわれ、あらためてインターネットで「救援募金」で検索したら、地元の日本共産党事務所にぶつかり、さっそく電話して訪問してきたとのことでした。「初めての募金なので共産党の名前でやらせてほしい」ということになり、日本共産党の募金箱をもって2時間で24万円を超す募金を集めたということでした。
この国難ともいえる危機にあたって、全国各地で、日本共産党員としてのエネルギーが深いところから発揮されつつあることはきわめて重要です。これまで党活動に参加できてこなかった同志が、つぎつぎに募金活動など救援活動に参加しつつあります。ある県委員長は、「これまで立ち上がっていなかった党員が多数がんばっている。党内に立党の精神に立った巨大なエネルギーがわきおこっている」との報告を寄せました。
全国から寄せられた義援金は、宮城県、岩手県、福島県の3県に、第1次分としてそれぞれ1000万円ずつお渡しいたしました。引き続き被災した市町村に順次届けるようにいたします。現時点では、現地からの要望にこたえ近県からの物資支援は強めますが、党が独自に、全国的規模での物資の支援、一般のボランティア支援にとりくむ条件は、まだ存在していません。そうしたもとで、募金活動は、現時点で、全国の党組織がとりくむことができる被災地への救援の主要で最大の手段であり、これをさらに思い切って強めることを心からよびかけるものであります。
この間、全国の都道府県、市区町村のわが党議員団は、それぞれの自治体にたいして、被災者の住宅確保をはじめとする避難の受け入れや物資の支援などの広域支援に自治体としてとりくむことを、いっせいに申し入れてきました。全国の自治体で被災者の方々の受け入れが開始されています。受け入れがおこなわれた自治体では、それぞれのところで被災者を温かく迎える活動がすでに始まっていますが、わが党もこれに適切な形でとりくむ活動を強めたいと思います。
現時点では、全国からの一般のボランティア支援を被災地で受け入れる条件はまだ整っていませんが、ボランティア登録は積極的にすすめ、受け入れ条件が整った被災地域から支援に入るようにしたいと思います。
二、当面する党活動の基本について
つぎに当面する党活動の基本について報告します。
わが党は、この大震災にあたって、14日、「東日本大震災の被害が未曽有の規模で広範囲に及んでおり、救援と復興にすべてを傾注すべき」として、いっせい地方選挙を全国的に延期することを政府・各党によびかけました。しかし、民主党、自民党、公明党などが、全国的延期はおこなわないことを主張し、残念ながらわが党の提起は実りませんでした。
こうしたもとで、わが党は当面する党活動の基本について、つぎの点を揺るがず堅持して奮闘します。
――国民の苦難軽減を立党の原点としているわが党の本領を発揮して、被災地の救援・復興のために、被災地と全国の党組織が心を一つに総力をあげて頑張り抜きます。
――いっせい地方選挙にあたっても、この立場を貫き、今回の選挙戦全体を、日本国民が、国民的エネルギーを発揮して、被災地への救援・復興をやりぬき、戦後最大の国難を打開し、それを通じて新しい社会をつくる契機にしていくという姿勢で選挙にとりくみ、わが党の勝利・前進をめざします。
三、いっせい地方選挙の訴えの基本について
つぎにいっせい地方選挙の訴えの基本について報告します。
今回のいっせい地方選挙は、東日本大震災による災害と福島原発事故の危機によって、様相が大きく変化しており、国民への訴えも発展させる必要があります。いまの戦後未曽有の危機のなかで、この国難にどういう姿勢で臨んでいるかが、地方選挙ではありますが、有権者の政党選択の基準として重要な意味をもつ選挙となっています。
選挙戦の訴えにさいしては、大震災にたいしてわが党がどういう姿勢で臨み、どういうとりくみをしているかを伝えるとともに、日本国民が立場の違いをこえ、国民的エネルギーを発揮して、力をあわせてこの災害を乗り越え、新しい社会を築こうという訴えを前面にすえることが大切です。この訴えとあわせて、それぞれの地方自治体の政治を「福祉・防災のまちづくり」に転換する――住民の命と暮らしを守る自治体をつくろうという党の立場を訴えるようにしていきたいと思います。
この立場から、今回のいっせい地方選挙での訴えの基本については、つぎの諸点が重要になってきます。
被災者救援、原発事故の危機回避――二つの緊急の大問題にとりくむ
第一は、直面する危機を打開することであります。
東日本大震災の被災者救援、福島原発事故の危機回避は、多くの人々の命に直結します。この二つの大問題は、政治的立場をこえて、日本国民の総力をあげ、何としても打開しなければならない緊急課題であります。日本共産党は、この二つの緊急の大問題に真正面からとりくみ、政府・自治体とも協力し、広く国民と力をあわせ、解決のためにあらゆる努力を傾注します。
――避難所での二次災害をふせぐためにあらゆる力をつくします。救援された方々が、避難所生活で命を落とす痛ましい事態の拡大を、何としても防がなければなりません。燃料、水、食料、医療品など支援物資を、被災者のもとにとどけ、医療、介護などのケアスタッフを派遣するために党としても全力をつくします。
――より安定した避難所の確保が必要です。そのために広域的な協力体制づくりを強化します。空いている公共住宅、雇用促進住宅、公務員宿舎の活用、民間住宅の借り上げなどを、全国各地で推進します。
――希望者のすべてが入れる仮設住宅を速やかに建設することも喫緊の課題です。仮設住宅の建設は一部で開始されていますが、災害の規模にみあった、思い切った大量建設が必要です。
――福島原発事故の当面の危機を何としても収束するために、原子力安全委員会、原子炉メーカー、原子力機構、大学などの専門家、関係技術者の知恵と能力の総結集をはかることを、政府に引き続き強く求めていきます。
――原発事故から国民の命と健康を守るために、国民への正確な情報伝達、ヨウ素剤の周辺住民への配布、被ばく検査と除染、避難者の生活と医療の支援などを、政府が責任をもっておこなうことを要求します。
――原発事故によって、すでに一部の原乳、ホウレンソウ、カキナなどから暫定基準値を超える放射能が検出され、政府が出荷停止を指示するなど、農家に重大な被害をあたえています。農業も含めて国民にあたえた被害は、東京電力と国が全面的に補償することを強く求めていきます。
――原発災害に関する正確な情報を、政府が責任をもって国民に伝えることの重要性をとりわけ強調したいと思います。日本学術会議が、18日発表した声明では次のように訴えています。「未曾有の災害に直面して国民が覚える不安感は、直面するリスク(危険)に関する正確な情報が、必ずしも的確に伝達されていないことに起因することが少なくありません。たとえ深刻な情報であっても――むしろ深刻な情報であればあるほど――正確に国民に伝えられるべきものです。そうであればこそ、事態の深刻さを冷静に踏まえた適切な行動を求める呼びかけは、人々を動かす力となるものです」。その通りだと思います。放射能についての正確な測定結果を含む情報を国民に公開し、国民と共有してこそ、安易な楽観視も、過剰な危惧も抑制し、風評被害を防止することもできます。わが党はこのことを強く求めていくものです。
戦後未曽有の災害からの復興に、国の総力をあげてとりくむ
第二は、戦後未曽有の災害からの復興に、国の総力をあげてとりくむことであります。
地震と津波で破壊された市町村では、住宅も、商店街も、役場も、学校も、病院も、道路も、橋も、港も、あらゆるものを一から作り直さなければなりません。壊滅的打撃を被った農林漁業と中小企業を再建しなければなりません。
被災地の多くが、この間の地域経済の衰退、高齢化と過疎化などの荒波を受けてきた市町村であり、もともと財政基盤が弱いところに、震災の大打撃を被っています。国家的、国民的なとりくみがなくては、とても復興は達成できません。
さらに大震災の社会的、経済的影響は、被災地に限られたものではありません。全国的な生産の減少、消費の低迷など、日本の経済社会そのものが大きな打撃を受けています。
それだけに復興には、国民的なエネルギーの発揮が必要です。大きな困難はありますが、文字通りの国家的プロジェクトで復興をやりとげるなら、それは日本社会と日本経済の新しい発展と成長のあゆみを開くことにもつながるでしょう。
復興にあたっての基本的考えとしては、「生活再建、地域社会の再建こそ、復興の土台」――住宅がつくられ、地域のコミュニティーが再建されてはじめて復興といえる――という立場が大切だと考えます。この立場にたって、文字通りの国家的なプロジェクトで復興をやりとげることを訴えるとともに、わが党はその先頭にたって奮闘する決意を表明するものです。
――「生活再建」では、被災者への個人補償の抜本的な拡充が不可欠です。阪神・淡路大震災を契機に、被災者をはじめ国民的な運動で、「住宅は私有財産だから個人責任」という国のかたくなな姿勢を変え、被災者生活支援法がつくられました。ただ、現行制度は全壊でも300万円の支援にとどまっており、これを大幅に引き上げることを強く求めるものです。
――「地域社会」の復興では、自治体への十分な財政支援が必要になってきます。津波で押しつぶされ、地盤が沈下した同じ場所に街を再建することができるかどうかなど、今回の復興には従来になかった新しい問題も生まれてきます。何よりも住民と自治体の自主性を尊重しながら、住民合意で新しい街づくりをすすめる抜本的支援を国がおこなうことが必要であります。
――「地域経済」の復興では、壊滅的打撃を受けた漁業、広大な農地が海水につかり、土砂に埋められている農業など、農林漁業の再建には従来の法律の枠組みを大きく超えた支援と補償が必要です。中小企業や自営業者にたいしても、これまでの枠組みを超えた思い切った支援と補償が求められます。
――これらを実行するための財源は、阪神・淡路大震災の規模よりもはるかに大きなものを必要とすることになるでしょう。
まず来年度予算を抜本的に組み替える大規模補正をおこなうことを提案します。法人税減税や証券優遇税制の延長など、2兆円におよぶ大企業・大資産家減税は中止すべきであります。歳出全般を見直し、高速道路無料化と子ども手当の上乗せの中止、米軍への「思いやり予算」やグアムの米軍基地建設費の中止、不要不急の大型公共事業の中止、原発の建設・推進経費の中止、そして政党助成金の撤廃などをおこない、これらの予算を復興のためにあてるべきであります。これらで年間5兆円程度の財源を確保することができます。
さらに政府として、244兆円にのぼる大企業の内部留保を、復興と被災地域の経済再建に活用する手だてをとることを提唱します。大企業に、被災地での雇用確保、関連中小企業の再建支援などの社会的責任を果たさせるとともに、従来の国債とは別枠で、「震災復興国債」を発行し、大企業に引き受けることを要請すべきであります。大企業は巨額の内部留保をもち、「手元資金」だけでも64兆円におよび、「使い道がなくて困っている」状態であります。いまこそこの巨額の資金を、被災地と日本復興のために役立てるときではないでしょうか。それは日本全体の内需を拡大し、日本経済が打撃から立ち直って発展をとげるうえでも大きなプラスとなるでしょう。
以上の立場で日本共産党は、被災地復興のために全力を尽くすことを、表明するものであります。(拍手)
原子力行政、エネルギー政策の抜本的な転換を
第三は、原子力行政、エネルギー政策の抜本的な転換であります。
福島原発の事故は、「想定を超えた」自然災害による不可抗力の事故ではありません。福島原発に対して、日本共産党や市民団体が、チリ地震級の津波がくれば冷却設備が機能しなくなり、重大事故に陥る危険をくりかえし指摘し、改善を求めてきたにもかかわらず、東京電力側がそれを拒否してきたという事実があります。この事故は、「日本では重大事故は起きない」という「安全神話」をふりまき、安全対策をなおざりにして原発をやみくもに推進してきたこれまでの原子力行政による人災といわねばなりません。
福島原発の危機回避にあらゆる知恵と能力を結集することを最優先課題としてとりくむとともに、日本の原子力行政、エネルギー政策は、従来のままでよいのかを、根本的に再検討する国民的議論が必要だと考えます。
まず安全最優先の原子力行政への転換が必要です。わが党は、そのために、つぎの諸点が大切だと考えます。
――日本の原子力行政の最大の問題は、「安全神話」を基礎としていることにあります。原発に関しても、これまで政府は「苛酷事故――大量の放射性物質が放出されるような重大事故――が起こることは日本では現実に考えられない」として、国際原子力機関(IAEA)が求める苛酷事故を想定した対策をつくることすらしてきませんでした。「安全神話」とは、「原子力は安全だから心配はない」とする立場ですが、これを国民に宣伝するとともに、自分もこの「神話」にとらわれて、安全対策をおろそかにするというものであり、こんな「神話」に固執している国は、日本以外には世界のどこにもありません。アメリカで、1979年にスリーマイル島の原発事故が起こったとき、事故調査の最終報告書でもっとも強調されたのは、「原子力発電は安全だ」という思い込みにこそ最大の問題があった、これを「原子力発電は本来的に危険性の高いものである」という姿勢に切り替えなければならないという反省でした。この教訓は、いまでは世界の多くの国ぐにの共通の認識になっています。こんどこそ「安全神話」を一掃し、原子力のもつ本来的な危険性について国民に正直に語り、政府が国民の安全確保のために万全の体制をとる、正直で科学的な原子力行政へと転換することを、わが党は強く求めるものであります。
――この立場にたって、原子力政策の思い切った転換をはかる必要があります。国際基準に合致し、今回の震災の教訓も踏まえた新しい安全基準をつくり、全国にある原発の総点検をおこなう必要があります。政府が、昨年策定した14基以上の原発を新増設する無謀な計画はきっぱり中止すべきです。東海地震の想定震源域の真上に位置する浜岡原発は停止すべきです。老朽化した原発の「延命」は中止すべきです。危険きわまりない高速増殖炉「もんじゅ」、プルトニウムが入った燃料を一般の原子炉で燃やすプルサーマルなど、プルトニウム利用の核燃料サイクル政策の中止を強く求めます。
――原子力の安全確保の体制の面でも、日本の体制には、世界の水準からみて、重大な欠陥と立ち遅れがあります。わが国が批准している「原子力の安全に関する条約」では、原子力の安全のための規制機関は、原子力発電を推進する行政機関と、明確に分離することを義務づけています。イギリスでは保健安全執行部(HSE)が、ドイツでは環境省が、アメリカでは独立した行政機関として3900人の常勤スタッフを擁する原子力規制委員会(NRC)が原子力の安全のための規制機関としての仕事にあたっています。これらはすべて、推進機関から分離されたものであります。
ところが、日本では、規制機関とされる原子力安全・保安院は、推進機関である経済産業省の一部門となっています。現在、推進部門から独立した形になっているのは、原子力安全委員会だけですが、その権限はきわめて弱いもので、安全規制や事故対策でも補助的な権限しかあたえられていません。こんな国は欧米にはありません。今回の事故にさいして、原子力安全委員会委員長代理などをつとめた住田健二氏から次のような指摘がされています。「私は、原子力を規制する保安院が、推進する立場の経済産業省の傘下にあることは問題だとかねてから主張してきた。その弊害が、今回も出てしまったように思えてならない」「日本の原子力安全行政の制度的欠陥という、一番心配していたことが露呈してしまった」。わが党は、日本でも、アメリカの原子力規制委員会のような、推進部門から独立し、強力な権限と体制をもった原子力の規制機関をすみやかにつくることを強く要求するものであります。
これらの安全最優先の原子力行政への転換は、これまでも、わが党がいっかんして求め続けてきたことです。わが国史上最悪の原発事故の教訓に立って、今度こそこの転換を思い切ってなしとげること、それもすみやかになしとげることを、強く要求するものであります。
同時に、原発依存のエネルギー政策から、自然エネルギー(再生可能エネルギー)への戦略的な転換を決断すべきであります。ドイツではすでに、発電量の16%を再生可能エネルギーでまかなっています。これは福島第1原発1号機の25基分に相当する発電量です。ドイツではさらに、2020年には発電量の30%以上、2050年には80%をめざす計画を立てています。
いま多くの国民のみなさんが、原発事故の恐るべき危険性を肌身で感じ、原発依存からの脱却の道を真剣に考え出しています。原発依存から抜け出し、太陽光と熱、風力、水力、地熱、波力、潮力、バイオマスなど再生可能エネルギーへの転換が必要です。同時に社会のあり方としても、「大量生産、大量消費、大量廃棄」、あるいは「24時間型社会」といわれるような社会から脱却して、低エネルギー社会への転換が必要です。わが党は、エネルギー政策の大転換にむけた、国民的な議論と合意をはかることを強く訴えていきたいと思います。
住民の命と暮らしをまもる「福祉・防災のまちづくり」を
第四に、地方政治の問題では、住民の命と暮らしを守る「福祉・防災のまちづくり」への転換を訴えてたたかいます。
わが党は、すでに1月に発表した「いっせい地方選挙政策アピール」で、暮らしと地方自治、地方経済を立て直す「四つの転換」――(1)福祉と暮らし最優先への転換、(2)地域に根ざした産業振興への転換、(3)TPP反対、農林漁業再生への転換、(4)住民の声がとどく議会への転換を提起し、全国で住民のみなさんに、その実現を訴えています。震災問題でのわが党の基本的立場と一体に、
これまで訴えてきた地方政治における「住民が主人公」への転換を堂々と訴えてたたかいます。
そのさい強調すべきことは、「住民の福祉を守る」という地方自治体の原点と、「災害から命を守る」という自治体の責務とは一体のものだということです。災害から住民の命を守るためには、学校、公共施設、住宅などの耐震化、乱開発の防止と都市計画、堤防の強化など、ハードの面での対策の強化がもとより必要です。同時に、普段から医療、介護、福祉、子育て支援などの強い基盤とネットワークがあってこそ、災害時にも大きな力を発揮します。
この間、全国で、公立病院の廃止など地域医療を崩壊の危機に陥れ、保健所を半減させ、介護も保育も民間まかせにし、市町村合併の押し付けで役場を住民から遠いものとし、公務員削減で身近な住民サービスを削り、消防力でさえ「広域化」の名で削減する――あらゆる分野で「住民の福祉を守る」という自治体の仕事が、「構造改革」「地域主権」のかけ声で壊されてきました。こういう姿勢でいざという時に住民の命を守ることができるかということが問われなければなりません。この流れを転換してこそ、災害時にも命を守る仕事ができるということを訴えていきたいと思います。
「住民の福祉を守る」ことは自治体の原点であるとともに、その役割が常日頃から発揮されてこそ、災害にも強い自治体になる。日本共産党は、この選挙をつうじて、全国の自治体が東日本大震災の被災地支援にとりくむとともに、それぞれの自治体が、住民の命と暮らしを守る「福祉・防災のまちづくり」にむけて前進するよう、全力で奮闘するものであります。
四、選挙戦のとりくみについて
「結びつきを生かし、広げることを軸にした選挙活動」を
最後に、選挙戦のとりくみについて報告します。
実際の選挙活動においては、震災の状況の推移、国民の気分や感情を考慮したていねいな対応が求められていますが、私が何よりも強調したいのは、「支部を主役」に、草の根から、一人ひとりの「結びつきを生かし、広げることを軸にした選挙活動」をすすめるという2中総決定が、こういう時こそいよいよ決定的に重要になっているということであります。結びつきをいかして、対話、「集い」をどんどん広げ、震災問題での救援・復興への支援をよびかけるとともに、地方政治の転換を訴え、わが党への支持を広げていく。そして、被災地救援・復興支援でも、選挙活動でも、その担い手を広げに広げ、住民とともにとりくむ。わが党がもつ草の根の力を発揮して頑張り抜くことが基本中の基本であります。
国民の気分・感情を考慮しながら、堂々と政見を訴え抜く
いま一つ訴えたいのは、堂々と政見を訴えぬくということです。
それぞれの地域ごとに、国民の気分・感情にそくした選挙活動のあり方の工夫をおこなうことは必要ですが、いっせい地方選挙は、東日本大震災の救援・復興への全国民的なとりくみを訴えるとともに、今後4年間の地方政治のあり方をどうするかを有権者に問うものであり、地方政治の現状の問題点を明らかにし、わが党の公約を堂々と訴えて、審判を仰ぐことは当然のことであります。「自主規制」「自粛」の名で、政党・候補者の選挙活動を制限し、また自ら選挙活動を放棄する動きが一部にありますが、これらの有権者の冷静で正確な選択を妨げる動きには、わが党はくみしません。
これは三重県で発行されている伊勢新聞の3月21日付ですが、大震災を理由にした「選挙自粛」の動きについて、「大震災での選挙自粛 小手先の人気取り策 必要な権利と義務の遂行」と題して、つぎのようにきびしく批判しております。「選挙をパフォーマンスと捉える政党や立候補者からすれば、自粛は当然の結論だ。だが、選挙はパフォーマンスではない。……言うまでもなく、民主主義の根幹で、選ぶ側も選ばれる側も権利と義務の行使の機会だ。選ばれる側の自粛は、選挙をパフォーマンスと認めるのに等しく、選ぶ側の選択権を侵す暴挙でしかない」。私もその通りだと思います。
わが党は今回の選挙戦において、国民の思い、気持ちをよく踏まえながらも、選挙にあたっては全有権者を対象に堂々と政見を訴えぬく姿勢を、揺るがず堅持して奮闘するものであります。
被災地と全国が固く連帯し、日本共産党の不屈の底力を発揮しよう
同志のみなさん。日本共産党は、今年で、創立89周年を迎えます。わが党の歴史を貫くものは、侵略戦争と植民地支配に反対し、平和と民主主義の旗を掲げて命がけでたたかいぬいた先輩たちの歴史が示すように、日本が国難に遭遇したさいに、理性と正義の旗を勇敢に掲げ、不屈にたたかうというところにあります。戦後最悪の災害で、多くの国民が苦しみのふちにあるいまこそ、日本共産党の革命的伝統と不屈の底力を発揮すべきときだということを私は心から訴えたいと思うのであります。(拍手)
私は、報告の最後に、被災地で奮闘する同志たちと、全国の同志たちの連帯を重ねてよびかけたいと思います。とりわけ、全国の同志たちが、被災地救援・復興支援にとりくみながら、いっせい地方選挙にも、この新しい条件下で新たな知恵と力をつくして頑張り抜き、立派な結果を出すことは、被災地でいま頑張っている同志たちへの最大の激励ともなるでしょう。その力は、これから長期にわたるであろう被災地の復興という国民的な大仕事を支える重要な力ともなることでしょう。
全国の同志のみなさんの心を一つにした奮闘をよびかけ、中央委員会がその先頭にたって奮闘する決意を申し上げ、報告といたします。(大きな拍手)