2011年3月23日(水)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
「ルネサンス」は、「再生」や「復興」を意味します。ダ・ビンチ、ミケランジェロやラファエロが活躍した文芸復興の輝かしさとあいまって、人をひきつけてやまない語です▼数年前、「原子力ルネサンス」という言葉が生まれました。地球の温暖化をくい止めるため、原子力を石油や石炭にかわるエネルギー源に。原子力業界は色めき、各国で原発の建設が盛んになりました▼菅首相も、津波と原発事故への対処に追われながら悔やんでいるかもしれません。大震災の前、内閣の外交の成果に、いつもベトナムへの原発の売り込みをあげていました。しかし、「原発ルネサンス」は「原発クライシス(危機)」に変わってしまいました▼1986年のチェルノブイリ原発事故を取材した戯曲に、「石棺」があります。作者グーバレフは、旧ソ連の科学記者。登場人物に皮肉をこめて語らせます。事故の責任者は、ソ連のダ・ビンチやミケランジェロ、ラファエロだ―▼つまりこうです。“エジプトのピラミッドが風化しても、チェルノブイリの石棺ピラミッドは1万年以上立ち続けるだろう。20世紀のダ・ビンチやラファエロがどんな人間だったかを表す、記念碑のように”。石棺は、放射能をふくむ原子炉を閉じ込めたコンクリートの建造物です▼福島原発の危機の最中、過去の責任をすぐに問う気はありません。いまは信じるだけです。危機に立ち向かい再生のためにたたかう大勢の人々みんなが21世紀のダ・ビンチやミケランジェロだ、と。