2011年3月23日(水)「しんぶん赤旗」

主張

原発事故と農産物

正確な情報が不安を抑える


 東京電力福島第1原発の事故で放出されたとみられる放射性物質が、地元福島県や北関東地方の農産物や水道水から相次いで検出されています。消費者は食の安全に不安を、また生産者は出荷停止だけでなく、いわゆる風評被害にも不安を強めています。

 問題はさらに拡大する可能性があり、長期化もあり得ます。不安を取り除くため、政府は自らの責任で本格的な対応をとるべきです。その第一は政府が必要な調査を行い、正確な情報を速やかに公表することです。

政府の責任で調査を

 政府は21日、暫定規制値を超える放射性物質が検出されたことを受け、福島、茨城、栃木、群馬4県で、ホウレンソウとかき菜の出荷を当分停止する措置をとりました。福島県では原乳も出荷を停止しました。

 政府は、検出された放射線は微量であり、口にしても「直ちに健康への影響は生じない」といいます。流通しているものは安心して消費できるとしています。

 しかし、政府発表は消費者の不安を取り除くには不十分です。唯一の被爆国の国民として、体内に取り込んだ放射性物質による「内部被ばく」を含め、被ばくの危険性に敏感なのは当然です。

 原発事故が発生し、放射性物質が微量とはいえ各地で検出されていたことから、農産物などから検出されるのも時間の問題となっていました。政府は実際の農産物の放射能検査は自治体にまかせています。放射能汚染の検出はサンプル調査によるものです。サンプル調査にかからない農産物がありうることは否定できません。

 政府は問題の重大さに照らして、検査を自治体まかせにせず、自ら責任をもって放射能汚染の実態を広範に調査する必要があります。そのうえで正確な情報を系統的に公表すべきです。国民の不安を取り除き風評被害を防ぐにも、それが不可欠です。

 政府が設けた暫定規制値も十分な科学的根拠にもとづくのかどうか、疑問が出ています。国は食品に関する放射性物質の指標を決めておらず、暫定規制値は、原子力安全委員会が2000年に示した「指標」を緊急に援用したものです。政府は、農産物から検出された20日になって、食品安全委員会に指標設定を諮問し、正式決定に動いています。重大事故の発生を想定していなかったため、対策が後手に回っています。

 国による出荷停止や出荷を自粛するなど被害を受けた生産者への補償も急がれます。補償責任が第一に東電にあることは明らかですが、政府が率先して補償の枠組みをつくるべきです。消費者としても、風評に惑わされない冷静さを保ちたいものです。

速やかな終結をこそ

 福島原発の事故は、放射能に汚染された現場で作業する関係者の懸命の努力にもかかわらず、いまも危機を脱していません。注水で周囲の放射線量は下降傾向にあるとはいえ、放射性物質はいぜんとして環境に放出されています。

 半径30キロ以内の避難・屋内退避地域に住む住民は、苦しく不安に満ちた避難生活を余儀なくされています。この事態に一刻も早く終止符が打たれることを、日本国民だけでなく、世界がこぞって待ち望んでいます。





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