2011年3月20日(日)「しんぶん赤旗」
主張
被災者避難
住民の不安にこたえる情報を
東日本大震災でかつてない被害を受けた被災地では、1週間たっても混乱が続いています。被災者の救出・救援を急ぐとともに、安全な避難場所の確保や、食料品、水、医薬品、ガソリン、燃料など緊急の支援物資をあらゆる手段を動員して届けることが急がれます。
とりわけ正確で的確な情報を届けることは、被災者の不安を解消するうえでも不可欠です。なかでも東京電力の原子力発電所の重大な事故で避難を指示された住民は、目に見えない放射能の恐怖におびえています。口先で「安全」をいうだけでなく、住民が納得できる情報の提供が求められます。
原発事故「レベル5」
「どこまで逃げれば安全なのか。政府が避難を指示した20キロ圏内では不安だ」「避難先での生活はどうなるのか」「避難はいつまで続くのか」―。震災で被害を受けた原発の重大事故に対して、政府は東電福島第1原発について20キロ圏内は避難、20〜30キロ圏内は屋内退避を求め、第2原発については10キロ圏内の避難を求めています。避難を指示された人だけでも20万人をはるかに超します。
震災で冷却機能が失われ、建屋が破損し、格納容器の一部も破損したとみられる原発は、依然深刻な状態です。経済産業省の原子力安全・保安院は、第1原発1〜3号機の原発事故について、ようやく、国際的な評価で上から3番目の「レベル5」に引き上げました。
住民の不安にこたえるためには、正確な情報が不可欠です。事故のさいには「隠さない」「ウソをつかない」「過小評価しない」がなによりの鉄則です。過去の事故や災害でも、政府や当局が情報を隠し、過小評価したため、混乱を拡大したことがたびたびあります。
「避難の範囲が安全か」という不安には、政府はいま何が起きていて、今後どういう事態が予想されるのかをきちんと説明すべきです。被害の想定は、事態の発展やその際の条件によっても変わります。「安全」だと繰り返すだけでなく、最悪の場合にはどう対処するのかも政府は示すべきです。
避難を指示した住民の生活については、政府が責任を持つことを明確にすべきです。国の政策として進められた原発の建設で被害を受け、避難を指示された住民に政府が責任を持つのは当然です。自治体だけでは手に余ります。県内や近県だけではない遠方への避難も、政府が責任を持たなければ短期間に実行できません。
避難がいつまで続くかの不安にいますぐ答えるのは困難かもしれません。原発事故の事態の悪化をくいとめられるかどうかにかかっています。しかしいつまでとはいえなくても、最低限どんな見通しかを示すことは政府の責任です。できることは全てやるべきです。
伝え方にも工夫を
避難が指示されなくても、放射線量が上がっている周辺にも、どう安全が確保できるのかの説明は不可欠です。自然放射能やX線検査に比べてたいした水準ではないというだけでなく、正確な説明が求められます。誤った風評の広がりや過剰反応は禁物です。
情報の伝え方にも工夫が必要です。テレビやインターネットだけでは停電などで伝わらない人もでます。阪神・淡路大震災では、ラジオや掲示板が大活躍しました。過去の教訓を生かすべきです。