2011年3月19日(土)「しんぶん赤旗」
主張
患者や障害者
国が命守る責任果たしてこそ
東日本大震災の被災地では膨大な行方不明者の捜索が続くとともに、40万人もの人びとが厳しい寒さの中で避難を余儀なくされ、支援の手を待っています。
とりわけ患者や障害者、高齢者、乳幼児や子どもたちなど、適切な支援なしには避難生活に耐えられない被災者への配慮が極めて重要であり、急を要します。
弱者が過酷な状況に
長時間の移動や寒さ、極度の緊張を強いられ続けた影響などによって避難所で亡くなる高齢者が相次いでいます。未曽有の震災の中で、ようやく避難所にたどり着いた被災者の命が失われていくことに胸のつぶれる思いがします。
とくに健康面で弱い被災者については、できるだけ早く設備の整ったところへ移動できる手だてをとることが求められます。その間にも、水と食料、毛布、暖房や移動に必要な燃料を速やかに届け、原発事故などの正確な情報を知らせる必要があります。
避難も転院もできずに被災地の病院や特養ホームにとどまらざるを得ない患者や高齢者も残されています。医師や看護師、介護士のみなさんの献身的な努力に支えられていますが、早急な人的支援とともに点滴や医薬品などの補給、人工透析を受けられる体制を整えることなどが必要です。
ふだんの生活にも困難を抱えている障害者は、震災の中で過酷な状況に追い込まれています。支援団体は障害者の安否確認に全力をあげていますが、厳しい条件の下で難航しています。
聴覚障害者はテレビがないと情報を得られないため、紙に書いて情報を伝えることや手話のできる人の協力が必要です。視覚障害者の不安は計り知れません。こまめに声をかけてあげるなど十分な配慮と生活の手助けが不可欠です。重度身体障害者のための介助者の配置、障害者用トイレの設置などが必要です。おとな用の紙おむつや尿もれパッドも足りません。
乳児のためのミルクや紙おむつの不足も伝えられています。日本産科婦人科学会などが現地の医師への調査にもとづいて16日、厚生労働省に緊急の要望書を提出しました。それによると、岩手で粉ミルク5千缶、産着千枚、消毒剤150箱、宮城でも紙おむつや粉ミルク、毛布などの確保が急がれています。
厚生労働省は医薬品などの供給で「万全の措置」を関係団体に依頼し、障害者支援を各県に連絡し、被災した子どもたちのケアを各県に連絡するなどの措置を取っています。しかし、未曽有の震災による膨大な被災者へのゆきとどいた支援が、大きな被害を受けた現地の自治体の手に負えないことは明らかです。
あらゆる手段動員し
福島、岩手、宮城の3県議会の議長も、国に迅速な救援を求める緊急の要請を行っています。
ここは政府がしっかりとふんばるしかありません。災害対策基本法は「国は、国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護する使命を有することにかんがみ、組織及び機能のすべてをあげて防災に関し万全の措置を講ずる責務を有する」と定めています。
政府は自らが直接実行に乗り出すとともに全国の地方自治体の力も結集し、未曽有の災害にふさわしくあらゆる手段を動員して必要な手だてを直ちに取るべきです。