2011年3月12日(土)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
通勤途中の駅に電車が止まり、ドアが開いたとたんでした。揺れる、揺れる。車体が揺れては左右に振れるように傾く▼「地震だ」とホームに飛び出る乗客たち。「運転中止」の放送。階段をおりて改札口に向かうと、また放送がありました。「仙台の方で震度7の地震があったようです」「危険です。建物の外へ出てください」▼ごったがえす駅前。タクシーで職場に行こうと乗り場に並んだものの、車は来ません。やがて、地面が深呼吸するようなゆっくりとした揺れが来ました。長い余震。手すりにつかまって離れない人。気分が悪くなる。女子高生が、「酔う、酔う」と声をあげました▼「東京でも九段会館の天井が落ちた」「火事も」…。震災の断片が耳に入ってきます。行列の中で、なんともいえない感情が不意にこみ上げてきました。悲しみ? 憤り? 不安? すべてがないまぜになったような、人知のおよばない非情な自然の力に対する無力感だったかもしれません▼バスが動き出し、飛び乗りました。降車して約40分、汗だくで歩き、職場に着きました。発生から2時間半以上。編集局の前を、家に帰れるあてもなく新宿へ向かって歩く人々が、列をなしていました▼テレビで知った、東北地方のありさま。記録破りのマグニチュード8・8。近年は地震が相次ぎ、決して災害を忘れていたわけではありません。しかし、人の備えを待ってくれない地震。犠牲と被害を最小限にとどめるよう、あらんかぎりの力をつくすだけです。