2011年3月11日(金)「しんぶん赤旗」
教師続けてよかった
歓声・涙 「現場に希望」
「君が代」裁判勝訴
「民主主義は生きていた」「憲法は生きていた」―。「日の丸・君が代」の強制に従わなかった教職員への処分を取り消した10日の東京高裁判決に、詰め掛けた原告、支援者から大きな歓声がわきました。
|
「懲戒処分を取り消す」。大橋寛明裁判長が主文を読み上げると原告席や傍聴者席から「おー」という声が起こりました。「信じられない」と涙を流す人も。
都教育委員会が「日の丸・君が代」を職務命令で強制する通達を出してから8年。「強制はおかしい」。そう考えた教職員は、自分の信条に反して起立すべきか、不起立で処分を受けるかを迫られてきました。悩んで身体症状が表れ、休職や退職に追い込まれた人もいます。フロア形式など現場で生徒たちと創意工夫してつくりあげる卒業式は禁じられました。
現職高校教員の女性(51)は「校長に『担任をしたかったら立つ練習をしたら』といわれる状態だった。それでも疑問を持つ教員がいつづけることが大事だと思ってきた。(きょうの判決で)教師をつづけてきてよかったと思う」。
都教委の強制をめぐってはほかの裁判で敗訴が続いていました。最高裁は「君が代」のピアノ伴奏を強制した職務命令を合憲とする判決を出しました。都立学校の現場では、上からの命令ですべてが決められる空気が一気に強まり、教職員と生徒との人間的なかかわりから、自由な教育実践をつくりあげることが困難にされてきました。そんな中での逆転勝訴です。
処分後退職した原告の女性(64)は「同じ高校で8人処分された。ずっと負け続けて教員は希望を失っていた。明るい自由な精神をめざす都立高校の核心をつぶす通達。これで現場の先生も希望をもっていってほしい」といいます。
男性(66)は「最高裁の判例があるなかで、通達の違憲・違法が認められなかったのは残念だが、それでも原告を勝たせようという裁判官の苦心の判断があったと思う。原告が陳述のなかで教育の条理を訴えてきた成果だ」と語りました。