2011年3月10日(木)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
旧ソ連の小話に、行列ダネが少なくありません。たとえば、長い買い物行列にとうとうがまんできなくなった男の話です▼彼は、“よし、こんな物不足の国にした指導者に一発くらわせてやろう”と、クレムリンへ向かう。ところが、早々と家に帰ってくる。妻がわけを聞くと、“みんな考えることは同じで、クレムリンの行列の方が長いわい”▼いまの日本でも、行列姿をみかけます。評判のいいラーメン屋。ゲーム機の新製品を売り出す家電店。有名な画家の展覧会…。しかし、路上に並ばない待機の行列は、人の生き方さえも狂わせます▼保育所に入れず待機する児童が、過去最多の4万8356人。昨年10月調べです。親は安心して働けません。特養ホーム入所の待機者42万人以上。09年調べです。2000年の4倍。家族の介護や看護のために仕事を辞めたり職場を変えたりした人が、1年間に約13万人いる、といいます▼物不足に陥るとヤミ市場が広がるように、介護の備えの貧しさにつけこむ会社も現れます。先日の国会で、山下芳生参院議員が「寝たきり専用賃貸住宅」の実情を紹介しました。食事ができず栄養を管からとる人だけを入居させ、会社の身内の事業者が医療・看護・介護すべて仕切る。介護保険から入る金がめあてです▼ゆりかごから車いすのときまで、待機、待機の日本。指導者に一発くらわせなくてもいい。変える力は、永田町や霞が関におしよせるデモ行進や投票所にかけつける人々の、行列の中にあります。