2011年3月9日(水)「しんぶん赤旗」

主張

東京大空襲66年

国は被害者補償の責任果たせ


 アジア・太平洋戦争の末期、日本各地は米軍機の空襲をうけ、民間人が多数犠牲になりました。そのなかでも被害が大きかったのが66年前の「東京大空襲」です。

 1945年3月10日の真夜中、300機をこす米軍の爆撃機が、木造家屋が密集する東京の下町一帯を焼き尽くしました。日本の侵略が原因となった戦争とはいえ、広島・長崎への原爆投下や各地の無差別爆撃による被害は甚大でした。助かった人たちも長い間苦しみ、いまは高齢化もすすんでいます。空襲被害者の救済のため、被害者補償法の制定が急務です。

他国と比べて冷淡

 戦争だからといって戦闘員でもない民間人を無差別に殺傷することは、戦時国際法でも禁じられた行為です。居住地域を狙った米軍の無差別爆撃は明らかに国際法違反です。本来、空襲被害者には米政府に対しても損害賠償を請求する権利があります。その賠償請求権をサンフランシスコ条約で日本が放棄した以上、日本政府が被害者に補償するのは当たり前です。

 旧軍人については手厚い補償を行ってきた政府は空襲被害者への補償は拒み続けています。戦争による被害者に広く国家補償をしている諸外国と比べても日本政府の態度はあまりに冷淡です。

 ドイツは軍人だけでなく、「戦争の直接的影響」による一般国民も補償の対象にしています。イタリアやオーストリアでは軍人と民間人の区別なく平等に補償しています。イギリスやフランスには一般国民も補償対象にする根拠法があります。

 こうした諸外国の戦争被害の補償制度を見習って、補償にふみだすことこそ政府のつとめです。民間人を戦争被害補償の対象にしない日本は、世界でも異端児としかいいようがありません。

 軍人・軍属などには軍人恩給や援護年金などで総額60兆円をこす補償・援護をしながら、政府が一般民間人の被害者への補償を66年間も拒絶し続けたことには道理がありません。憲法第14条の「法の下の平等」への違反は明白です。差別的な扱いをやめ、空襲被害者補償への方針転換こそ必要です。

 政府は、軍人は「国が徴用して国家のために武器を持たせ戦わせた」から国家補償が当然といっています。これは国家総動員法(38年)によって一般民間人を戦争協力に駆り出し、武器の部品作りや軍人の衣服作りなど戦争の「後方支援」を押し付けた事実を無視した議論です。

 「一億火の玉」といい軍・民一体を叫んだのは政府です。園田直厚生相(81年)が軍人・軍属のみの救済が「理論としてはなかなか筋の通らぬところもある」とのべたのは当然です。民間人の犠牲は「戦争だから仕方がない」というのは大間違いです。

補償法の制定を

 空襲被害者への国家補償法を制定させるため、東京や大阪、名古屋、沖縄などの全国各地の空襲被害者がつくる「全国空襲被害者連絡協議会」は運動を広げ、昨年11月には検討中の「空襲等被害者援護法(案)」も発表しました。死者の規模を約55万人と想定し、補償の実現を求めています。

 補償法の制定は問題を解決するうえで不可欠です。戦争被害者の救済の訴えに応え、空襲被害者補償法の制定を急ぐべきです。





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