2011年3月7日(月)「しんぶん赤旗」
列島だより
市庁舎建設どう考える?
地方自治体財政厳しい時に…
景気低迷と、民主党政権の交付金削減などにより地方自治体の財政はきびしくなっています。そのようななかでの自治体の市庁舎建設をめぐるリポートです。20年来の課題となっている東京・小金井市と、突然、新築計画を打ち出した鳥取市からです。
鳥取市
新築ありきの100億円計画
市民の暮らし応援こそ
鳥取市の市庁舎新築問題が市民の前に公然と現れたのは、昨年10月の市広報でした。
それは、市の「鳥取市庁舎耐震対策検討委員会」が昨年8月末、市議会の「鳥取市庁舎等に関する調査特別委員会」が9月に、それぞれ合併特例債が使えるうちにJR鳥取駅周辺に市庁舎を移転新築しようという意見が多数だったとする、同趣旨の最終報告を受け、竹内功市長は新築・統合の方針を打ち出したものです。
日本共産党は、直後の11月の市議選で100億円の市庁舎新築案に耐震改修すれば30億円ですむ、「不況下での市民の暮らしを応援すべきだ」と反対しました。
選挙後の11月27日に中心市街地などの10地区自治連合会の開いた市庁舎問題を考える集いが、市民的議論の始まる契機となりました。
市が、ことし1月に18会場で行った市民説明会や2月12日のフォーラムでは、「耐震改修した県庁舎は50年もつと言っているが、なぜ市庁舎は20年しかもたないのか」など情報提供の仕方や耐震対策の考え方、まちづくり、財政見通しなどに疑問や意見が噴出しました。
日本共産党市委員会(角谷敏男委員長=市議)は1月29日、鳥取大学の藤田安一教授を招き、市庁舎問題で集会を開きました。
藤田氏は、「市庁舎新築には住民の合意がなく、“市庁舎新築ありき”の市の姿勢は、住民自治を破壊する。市のアンケートは、耐震改修の選択肢がなく、建設場所を駅周辺に誘導するものでした。新庁舎を駅周辺に新築すれば商店街がさびれる」と語りました。鳥取市選出の市谷とも子県議も参加しました。
また、建築家の山本浩三氏は「市庁舎(本庁舎6階、第2庁舎5階)の上層部を取り除き4階建てにする減築で耐震性を確保できる。メンテナンスをきちんとすれば減築後50年もち、費用も10億円程度ですみます」と指摘しています。
市民や商店街から、「市の都合で数カ月で決めるのはおかしい。住民の意見を聞くべきだ」などの声や、「現在地での耐震改修をしてほしい」「市役所の移転は死活問題。商店街はみんな移転に反対している」「市庁舎を新築するお金を、値上げする国保料や水道料金に回してほしい」との不安、「市長リコール運動に取り組んでほしい」となどの意見も出ています。
市は、このような反対意見があってもあくまで鳥取駅周辺に新庁舎を建設するという基本方針(案)を2月定例会で説明しました。日本共産党市委員会は、新築・統合の白紙化を求める1万人署名に取り組んでいます。
角谷市議は「住民の声が無視されている。市の方針は白紙に戻し、時間をかけて一から議論し直すべきです」と語ります。(鳥取県・岩見幸徳)
東京・小金井市
「駅前」でなくジャノメ跡地
住民運動が市政動かす
東京都小金井市の市役所建設問題は、ことし1月下旬、11年前に稲葉孝彦・現市長が策定した「駅前建設」の方針を撤回せざるをえなくなりました。「税金の無駄遣いをやめて」という市民運動が市政を動かしたものです。
運動のきっかけは、小金井市役所建設をめぐる無駄遣いと、ごみ処理問題での市政運営にありました。
小金井市は1992年、市役所機能が市内各所に分散していたのを解消するために「ジャノメミシン工場跡地」を市役所建設用地として119億円で購入、ところが、「建てるお金がない」と、民間ビルの借り上げを強行しました。
一方、当選した稲葉市長は2000年7月、JR武蔵小金井駅南口の再開発事業を進めるためとして、119億円で購入した市役所建設用地を43億円で処分し、それを原資に駅前の再開発ビルを市役所用に購入する「駅前市役所」方針を策定。駅前市役所が完成するまで年間で3億5000万円もかかる「リース庁舎」を継続する姿勢を明らかにしました。
稲葉市長は、その「ジャノメミシン工場跡地」を07年に突然、ごみ処理施設の建設候補地の一つにしました。08年に同跡地周辺の市民が中心になり、市役所の建設場所を住民投票で決めるための「直接請求運動」を開始、日本共産党も運動に加わるなかで有権者の11%もの署名が集まりました。
直接請求の条例は議会で1票差で否決された(09年1月)ものの、直後の市議選で市長の駅前市役所を主張する市議が3人落選。市は建設地を選定するための市民検討委員会設置を余儀なくされ、昨年3月、新庁舎建設基本構想策定市民検討委員会が発足しました。
同検討委員会が昨年7月に実施した「市民1万人アンケート」では62・6%が「購入済みのジャノメ跡地に建てるべき」だと回答し、ことし1月下旬、市長に「ジャノメ跡地に建てるべき」だとの答申を提出しました。
稲葉市長は、この答申を「尊重する」と発言。推進会派も「重く受け止める」などと述べ、来年度予算案には、新庁舎の機能等についての基本計画を策定する「市民検討委員会」設置予算が計上されました。
今回の背景には、ごみ処理施設問題での失政、市民生活を後景に追いやる市政運営などへの批判もありました。
「駅前庁舎の是非を問う住民投票を実現する会」共同代表の橋詰雅博さんは語ります。
「市民検討委が新庁舎建設場所としてジャノメ跡地を答申しました。これは住民運動のパワーが市政を転換させたと思っています。住民運動の正当性を訴え続けたことが、その原動力となりました」
日本共産党の森戸洋子市議は、「市民と力をあわせ、共産党は直接請求運動に全力で取り組んできました。4月の市長選でリース庁舎の無駄遣いをやめさせ、市民の生活を第一にする市政に転換できるようにがんばります」と話します。(小金井市議・板倉真也)
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