2011年3月7日(月)「しんぶん赤旗」

主張

アフガン・パキスタン

米の干渉が事態を悪化させる


ゲーツ米国防長官が先月、米陸軍士官学校での講演でこう述べました。「もしも今後、アジアや中東、アフリカに大規模な地上軍を再び送り込むよう大統領に進言する国防長官が現れたら、その頭を検査すべきだ」

 ブッシュ前政権時から国防長官を務める同氏の発言は、米覇権主義の破綻を示す重いものです。米国はイラクとアフガニスタンでの戦争で多数の犠牲者と巨額の財政赤字を出し、疲弊しています。軍事介入は米国自身にとってさえ、なんら役立っていません。

相次ぐ民間人の犠牲

 米軍と北大西洋条約機構(NATO)軍は、アフガンからの戦闘部隊の一部撤退を7月に開始する予定です。それに向け、NATO軍はアフガン政府軍への治安権限の移譲を今月中に開始します。

 その矢先の1日、痛ましい事件が起きました。NATO軍ヘリによる攻撃で、9人の子どもたちが犠牲になりました。軍司令官は「誤爆」だったと認め、オバマ米大統領が3日、カルザイ・アフガン大統領に謝罪しました。

 米軍、NATO軍による反政府勢力タリバン掃討作戦は、住民に耐え難い苦しみを強いています。住民の強い反発を受けて、米軍は民間人への「誤爆」を防止するとたびたび表明してきました。それでも、今回のような事件が後を絶ちません。

 オバマ政権は、軍事的な成果をあげ、タリバンを弱体化させることが、アフガンの和解を促進し、撤退の条件をつくると主張しています。その姿勢が戦闘に拍車をかけ、和平を遠ざけていることは否定できません。撤退完了まで3年以上も要するとしているのも、戦略の実行が不確実なためで、見直しを迫られる可能性もあります。

 オバマ政権がアフガンと一体化させて取り込もうとするパキスタンとの関係も不安定で、アフガン撤退戦略を左右しかねません。

 アフガンと国境を接するパキスタン部族地域には、国際テロ組織アルカイダのメンバーが潜んでいるとみられ、米国はあくまで掃討を続けるかまえです。クリントン米国務長官は先月の講演で、アフガン側とパキスタン側双方から挟み撃ちする必要を指摘するとともに、米国、アフガン、パキスタン3国の共同を強調し、「共通の展望が必要だ」と述べました。

 しかし、米国がパキスタンへの干渉を強めることは、パキスタン国民の反米感情をかきたてます。米中央情報局(CIA)要員がパキスタン国内で2人を射殺した事件の推移は、それを示しています。米政府はこの要員が外交官であり、外交官特権をもつとして、釈放を要求しています。しかし、米国による秘密活動に国民が反発を強めるなかで、パキスタンは1カ月以上たったいまも米国の要求に応じていません。

泥沼を抜け出すには

 米国が覇権主義からの転換を迫られているにもかかわらず、アフガンとパキスタンで干渉政策を続けるなら、泥沼を抜け出すのは困難です。

 米軍を中心とする多国籍軍がアフガンへの報復攻撃を開始してから足かけ10年になります。問題はなお山積みで、撤退の道筋もはっきりしません。安定を築くには、和平への真剣な努力と外国軍の速やかな撤退が必要です。





もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp