2011年3月6日(日)「しんぶん赤旗」

パキスタン揺れる

改正求めた閣僚暗殺も

「イスラム教侮辱なら死刑」の冒瀆(ぼうとく)法

不寛容を懸念 「過激主義克服を」の声


 パキスタンで、イスラム教を冒瀆(ぼうとく)したとされる市民に罰金刑や死刑を科す刑法の規定が、議論の的になっています。この条項を問題視し改正を求めていた州知事と閣僚が相次いで暗殺されたほか、その容疑者を「背教者を処罰した英雄」として扱う動きもあります。メディアからは宗教的不寛容の広がりを懸念し、過激主義の克服を訴える声が出ています。


 同国刑法は礼拝施設の損壊や「故意に宗教的感情を傷つけること」、聖典コーランや預言者ムハンマドに対する侮辱などを禁じており、これらの条項はまとめて「冒瀆法」と呼ばれます。1980年代には死刑を含む条項が追加されましたが、執行されたケースはないといいます。

 同法が改めて関心を呼んだのは昨年11月。東部パンジャブ州に住む少数派のキリスト教徒の女性が、預言者を侮辱したとして同法に基づき絞首刑を言い渡されました。

 今年1月には、この判決を批判していた同州のタシール知事(当時)が、首都イスラマバードで護衛の警官に射殺されました。知事は、この女性を公然と支持して釈放を訴えたほか、同法の改正を求めていました。

 逮捕された男は法廷で「背教者に教訓を与えただけ」と陳述。宗教団体などが男を「英雄」と称賛し、裁判所前では群衆が男に花びらを浴びせて祝福しました。男を支持する弁護士約300人が、裁判所に男の弁護を「志願」したといいます。

 同法をめぐる「2度目の暗殺」は今月2日、首都で発生。車で閣議に向かっていたバッティ少数民族相が銃撃を受け死亡しました。

 自身もキリスト教徒であるバッティ氏は、タシール氏と並んで冒瀆法に批判的な姿勢で知られていました。現場に大量に残された冊子には、「イスラムを冒瀆する者を処刑した」「加担する者は同じ目に遭う」などと書かれていたといいます。

 与党パキスタン人民党(PPP)議員のレーマン元情報放送相は一連の経緯について「宗教の名の下に不正義が行われている」と指摘。しかしギラニ首相はタシール知事の事件後、冒瀆法改正の意思はないと言明しています。

 英字紙ドーン(3日)は社説で、「政治家が宗教的過激主義に迎合し、沈黙を守っている」と批判。ニューズ紙(4日)は「世界がパキスタンの将来を懸念している」と指摘し、「問題は私たちが団結して過激主義に立ち向かうことができるかどうかだ」と警鐘を鳴らしました。 (安川崇)





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