2011年3月5日(土)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 ニュージーランド政府が、大地震の救出活動を打ち切りました。いまも、日本人28人をふくむ約200人の行方が知れません。家族の胸が張り裂けるような思いを察すると、言葉はむなしい▼四十数年前のこと。26人の命を奪った1964年の新潟地震が人々の記憶に新しいころ、もっけの幸いとばかりに震災を利用した会社がありました。新潟の阿賀野川ぞいに工場をもっていた昭和電工です▼阿賀野川の下流に水銀中毒の患者がいる、と分かります。新潟水俣病です。昭和電工の工場が水銀を出したと疑われると、国は判断をためらい、同社は責任逃れを試みます。新潟地震で倉庫から流れ出した農薬の水銀のせいだ、と▼メチル水銀は全身の臓器に運ばれ、有害物質の脳への侵入を防ぐ関門を通りぬけ脳も侵します。患者は、病気だけでなく社会的にも苦しみました。「たたりだ」「うつる」「嫁にやれない」「補償金めあてのニセ患者」…▼水俣病と認められてこなかった患者と国の和解が、新潟地裁で成立しました。国と会社の補償、昭和電工会長の「責任とおわび」の表明も盛り込む和解です。新潟水俣病の確認から46年。患者たちはついに、「生きているうちに一人残らず救え」の合言葉の実現へ足がかりを得ました▼猪苗代湖や尾瀬の水も集めて流れる阿賀野川。アイヌの言葉で「清い川」を意味する、という説があります。政府の大臣も昭和電工の会長も、住民や患者とともに川のほとりに立ち、二度と繰り返さないと誓ってほしい。





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