2011年3月5日(土)「しんぶん赤旗」
米が対日要求70項目
残留農薬・食品添加物の基準緩めよ
金融・保険・郵便 米企業参入もっと
日米経済調和対話で初会合
外務省と米通商代表部は2月28日〜4日東京で、「日米経済調和対話」事務レベル会合(課長級)を行い、経済問題で双方の要望を交換しました。米側は、残留農薬の基準、新薬承認手続き、企業買収など多岐にわたる規制緩和を日本側に迫りました。いずれも米国大企業の利益を図る要求です。双方の発表によると、環太平洋連携協定(TPP)は議題になりませんでしたが、菅直人首相が唱える「開国」で米国が対日要求をエスカレートさせています。
在日米大使館の発表によると、対日要求は、情報通信技術、知的財産権、郵政、保険、農業関連課題、医薬品・医療機器など10分野にわたる約70項目。
農業関連で米国は、日本の安全基準が厳しすぎるとの立場から、残留農薬やポストハーベスト(収穫後に使用する農薬)の基準など「未解決の農薬関連問題への対処」を求めました。農薬や食品添加物の基準で「国際的基準を参照すべきだ」として、日本独自の基準を認めない考えを示しました。
医薬品・医療機器では、最も多い20項目以上の要求を盛り込み、日本に活発な売り込みを図る米医療・製薬大企業の主張を並べました。新薬の審査にあたって他国の治験データの利用を認めるなど、医薬品の承認手続きの迅速化を迫りました。
「対日M&A(企業の買収・合併)を阻害している可能性のある法律、規制、税制上の要件の見直し」を盛り込みました。官庁が政策を決定する際の意見公募手続きを「外国の利害関係者」に開放することも求めました。
また、「日本郵政グループの競争上の優位性を完全に撤廃」することを求めて、郵政事業の公共性を否定。金融、保険、国際郵便で米国などの民間企業に市場参入の機会を増やすよう迫りました。
日米経済調和対話は、昨年11月、菅首相とオバマ大統領の首脳会談で立ち上げが決まりました。今回が初会合。今年中に2〜3回会合を開き、結果をまとめることにしています。
この対話は、2001〜09年にかけて行われた日米経済対話、規制改革・競争政策イニシアチブを実質的に引き継ぎました。同イニシアチブのもとで、両国政府は要望書を交換。米側は郵政民営化や医療への市場原理導入など「構造改革」路線の実行を日本に迫りました。
兵器も買え
米通商代表部が昨年まとめた2010年外国貿易障壁報告書は、軍需についても、対日要求を盛り込んでいます。
報告書は航空宇宙産業に関して、「米国企業はしばしば日本に国防装備を提供する契約を勝ち取ってきた。外国からの年間国防調達の90%以上が米国からである」と成果を誇る一方、次のように注文をつけています。
「防衛省は国内の防衛産業を支援するため、国内生産あるいは米国技術のライセンス生産を全般に優遇している」
日本のGPS(全地球測位システム)整備についても、「米国企業が主要な部分を供給する機会を持てるよう期待する」として、米国防総省が運用するGPSとの一体化を狙っています。
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