2011年3月3日(木)「しんぶん赤旗」
打開策示し、政治動かす
国民のたたかいと連帯
衆院予算委 日本共産党の論戦
2011年度予算案が衆院で可決され、参院に送られました(1日)。国民の閉塞(へいそく)感が強まるなかで、その打開の方向を示したのは日本共産党でした。1カ月余におよぶ論戦を見てみると―。
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日航人員削減
危険な実態 国も調査
大畠章宏国土交通相は2月18日、日本航空(JAL)の大西賢社長を呼び、リストラによる人員削減によって安全運航が懸念されるとして「絶対安全という原点を忘れては困る」と強調。JALに調査・報告を求めるとともに、国交省として立ち入り検査を行うことを表明しました。
パイロット、客室乗務員、整備・地上職の実態など、大畠国交相が指摘した内容は、すべて日本共産党が国会質問でとりあげたもので、航空労働者のたたかいと連帯した日本共産党の論戦が政治を動かした瞬間でした。
志位和夫委員長は衆院本会議の代表質問に続いて、2月2日の予算委員会で、退職強要や整理解雇で55歳以上のベテラン機長が1人もいなくなったことなど安全性が脅かされている事実を示して追及。菅首相は病欠を解雇の基準としたことについて、「無理して乗務する原因をつくることは好ましくない」と述べざるをえず、大畠国交相は「安全第一が大前提。ご指摘について確認する」と答弁しました。
穀田恵二議員も2月17日の質問で、整備、貨物、客室乗務員の現場で、異常な人減らしにより安全が脅かされている実態を示し、大畠国交相に「立ち入り調査したい」と表明させました。
志位氏の質問について、「毎日」2月7日付は「経済財政危機と雇用不安の濁流渦巻く中で、経済再生と人間の幸福をどう調和させるか。歴史的な課題に一石を投じる質問だった」と評価。日本共産党の「ルールある経済社会」という提案が、経済の危機打開とともに、労働の誇りを取り戻す提案であることを示しました。
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TPP参加
論拠崩し貿易ルール提起
菅政権が参加・検討をすすめる環太平洋連携協定(TPP)。日本共産党は政権の推進の論拠を次々と覆してきました。志位氏は2月2日の衆院予算委員会で、食料の安定供給と日本の経済主権を失うとして、「『亡国』『売国』のTPP参加には絶対反対だ」と表明。農水省自身が、大規模化をやっても米国などに太刀打ちできず、価格補てんをしても「自給率低下は避けられない」と認めていることを示し、「自給率50%と関税ゼロは両立しない」と追及し、菅首相は答弁できませんでした。
経済主権では、労働、金融、保険、医療など、あらゆる分野で米国の要求を丸のみせざるを得なくなる構造を暴露。残留農薬や食品添加物など食の安全基準までアメリカいいなりとなると批判しました。
吉井英勝議員は2月28日の衆院予算委員会で、「米など重要品目の関税を引き下げ・撤廃しない」とした民主党の声明(2009年7月29日)を取り上げ、TPP推進が公約違反だと追及。菅首相は「重要品目に配慮する」としか言えず、事実上の公約違反を認めました。
日本共産党は論戦のなかで、日本がすすむべきは、「食料主権にたった貿易ルールの確立と東アジア諸国との平等・互恵の経済関係を発展させることだ」と提起しました。
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消費税
国民の声背に公約違反追及
菅内閣は、「税と社会保障の一体改革」の名で消費税の増税法案づくりを進めようとしています。
佐々木憲昭議員は2月23日の衆院予算委員会で、「4年間は消費税をあげない」との公約に違反すると追及。2012年3月までに消費税増税法案を成立させることを盛り込んだ09年度税制「改正」法付則104条を「撤回、削除することもありえる」(10年2月16日、衆院本会議)とした菅首相自らの発言をくつがえす民主党政権の姿勢を厳しく批判しました。
政府は、増税の口実として社会保障をあげながら、来年度予算案でも年金給付減など切り捨てにかじを切っています。野田佳彦財務相は、自公政権による社会保障改悪についても、政権交代後改善したものが何一つないことを認めました。佐々木氏は「これ以上負担できないという声が耳に入らないのか」と批判しました。
日本共産党の志位和夫委員長は1月27日の代表質問で「一方で社会保障を切り捨て、他方で大企業への減税のバラマキをおこないながら、消費税増税など論外だ」と批判。「今取り組むべきは、社会保障の拡充をすること、ゆきすぎた大企業・大資産家減税をただすこと、軍事費に縮減のメスをいれること」と求めました。
消費税増税に頼らない社会保障拡充の道を示す日本共産党に、「消費税引き上げに反対してくれたことを評価します」(千葉県柏市の男性)などの感想が寄せられました。
国保・保育・就活
人権無視のやり方ただす
自公政権時代の社会保障費削減の傷痕を治すという公約を投げ捨てただけでなく、逆に傷口を広げている菅政権。日本共産党国会議員団は、「今取り組むべきは、社会保障を削減から拡充に転換することだ」と主張しました。
志位委員長は、国保料について、所得300万円の世帯で40万円を超える高すぎて払えない実態を示して追及。学資保険まで差し押さえる無慈悲な取り立てをやめさせよと迫ると、菅首相も「胸が痛む思い」と述べざるをえませんでした。
この質問で事例をとりあげた大阪市では、共産党市議団も追及し、市長に「改めるべき点がある」と表明させ、人権無視のやり方をただす道を切りひらきました。
認可保育所に入れない待機児は過去最悪の2万6000人超です。高橋ちづ子議員は、定員枠を超えた児童の“詰め込み”を批判。政府が検討する「子ども・子育て新システム」は保育の市場化を強めるもので、公的な責任をさらに後退させると指摘し、国有地も活用するなど国の責任で保育所を設置するよう訴えました。
深刻な大学生の就職難については、宮本岳志議員が2月4日の予算委員会で、内部留保が244兆円もある大企業が労働者の採用を抑制していることを示し、「大企業に追加採用を迫るべきだ」と要求しました。
これに対し「要請していきたい」と約束した高木義明文部科学相は2月16日、厚生労働相、経済産業相との連名で、日本経団連をはじめ247団体に新卒者の採用枠拡大を求めました。
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米軍普天間基地
「方便」批判、「無条件撤去を」
1月27日の衆院本会議代表質問で志位委員長は、普天間基地(沖縄県宜野湾市)の「『県内移設反対』『閉鎖・撤去』という沖縄県民の総意はもはや揺らぐことはない」と述べ、昨年5月の「日米合意」の白紙撤回と普天間基地の無条件返還を主張しました。
その後、鳩山由紀夫前首相が、普天間基地の名護市辺野古「移設」の口実とした、米海兵隊の抑止力は「方便」だったと発言し問題となりました。
「新たな米軍基地を押し付ける決定がこんなにも軽々しく決められたのか。開いた口がふさがらない」。
2月16日の予算委員会で赤嶺政賢議員は、「日米合意」を押し付けるためのまさに「方便」だったことが明らかになったとして「日米合意」の撤回を改めて要求。菅首相は、「在日米軍は平和と安定に大きな役割を果たしている」と抑止力論に固執しました。自民党が「日米関係を悪化させる」として、「県内移設」の立場から鳩山発言を批判したのとは対照的な赤嶺氏の質問でした。
「沖縄の負担軽減に努める」という政府の言い分のでたらめさも明らかになりました。
赤嶺氏は、沖縄周辺海域で米軍の訓練強化が進んでおり、菅政権が昨年末に決定した新「防衛計画の大綱」、「中期防衛基本計画」では南西諸島地域での自衛隊強化をうたっていることをあげ、「負担軽減」と逆に“沖縄の軍事要塞(ようさい)化”が進んでいることを告発しました。
小沢氏疑惑
首相に「調査約束」させる
「政治とカネ」の問題で、笠井亮議員は2月21日の予算委員会で、民主党の小沢一郎元代表のヤミ献金疑惑にかかわる岩手県・胆沢ダム建設工事の談合疑惑を追及しました。
笠井氏は、「問題はない」と結論づけた国土交通省調査が、実際には談合情報をよせた提供者の事情聴取さえ行っていなかったズサンぶりを告発。これには菅首相も「さらなる調査を行うよう指導していく」と表明せざるをえませんでした。菅首相は、小沢氏の党内処分をもって「一つのけじめだ」と幕引きしようとしていますが、証人喚問がいよいよ避けられない事態に追い込まれました。
テレビ中継を見た人から「企業・団体献金を受け取らない共産党ならではの迫力ある質問でした」(愛知県の女性)との声が多数寄せられました。
各党は何を主張
民主党 「自民党化」を極限に
民主党は「自民党化」を極限にまで加速させました。
菅直人首相は野党時代、「沖縄に海兵隊はいらない」(1995年)としていましたが、「(海兵隊は他国から攻撃を受けた場合に)ともにたたかってくださる。敬意を表したい」(2月16日)と答弁。子ども手当についても、マニフェストで2万6000円としたことに「びっくりした」と無責任答弁。「野党からいろいろ議論が出ているのでこれから議論したい」(同24日)と述べる無節操ぶりです。
小川淳也議員は2月7日の質疑で、「消費税を25%にしても50兆円しか出てこないので社会保障費を2割減らすことが求められている」と主張。財政全体で支えるべき社会保障費を消費税でまかなうとして、際限のない増税と社会保障切り捨てを押し付ける姿勢を示しました。
自民党 「財界いいなり」けしかける
自民党は衆院予算委員会で、民主党政権のマニフェスト違反を再三にわたり取り上げました。しかし、「ルビコン川をわれわれはすでに渡っている。政府・与党は川の手前で右往左往しているだけ」(2月1日、野田毅議員)と増税実施を民主党にけしかけるなど、財界・大企業いいなりの立場から攻撃するものでした。
再三迫った衆院解散についても、菅首相が、増税法案を通してから信を問うというのに対し、「国民に信を問うことで(増税への)覚悟と受けとめる」(谷垣禎一総裁)と、解散してから増税法案を実施せよと順番が違うだけでした。予算の組み替え案でも、消費税について「当面10%」をと求めています。
安保・外交分野でも沖縄・辺野古への新基地建設を再三要求。「防衛費の増額を」(小池百合子総務会長)と求める始末。2月16日の予算委員会では、中谷元議員(元防衛庁長官)が、鳩山由紀夫前首相の“米軍にとって沖縄はパラダイス”との発言をあげ、「米国人は故郷を離れどれだけつらい思いをしているのか分かっているのか」などと非難。菅政権同様、抑止力にしがみつく姿勢をみせました。
TPPをめぐっては、本音は貿易自由化賛成ですが、国民の批判を恐れて、いっせい地方選を前に賛成を口にできません。
公明党 消費税増税で同じ路線
公明党は「マニフェスト違反」と菅政権を批判しますが、消費税増税に向けた与野党協議について山口那津男代表は「われわれは昨年の12月に具体的な案を既に提案している」(2月9日)として応じる姿勢を示しました。具体案とは「新しい福祉ビジョン」。「消費税を含む税制の抜本改革を行う」としているものです。
坂口力議員は同8日の質疑で、民主党の年金案は「絵にかいたモチ」と批判し、自公政権時代の年金改定が優れていると主張。「100年安心」とうそぶいて高すぎる保険料と低年金を押し付けた自公政権の社会保障改悪に反省もありません。
みんなの党 TPP推進の党と自慢
みんなの党の江田憲司幹事長は2月23日の衆院予算委員会で、食料の安定供給と経済主権を壊す環太平洋連携協定(TPP)について「早急に参加すべきだということを表明している唯一の政党だ」と胸を張り、早急な参加を迫りました。
2月28日に出した予算の組み替え動議では、子ども手当や高校授業料無償化などを廃止する一方、法人税を20%に半減して3・7兆円を大企業にばらまくことを要求。地方自治破壊の「地域主権型道州制」の導入を主張するなど自公政権の「構造改革」路線を加速する姿勢です。
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