2011年3月3日(木)「しんぶん赤旗」

困窮で受診遅れ 71人死亡

高すぎる国保料・窓口負担

7割が50〜60代男性・無保険は25例

昨年・民医連調査


 経済的な理由から医療機関への受診が遅れ死亡したとみられる事例が、2010年の1年間で71に上り、05年の調査開始以来最多に―。2日、全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)が加盟事業所を対象に行った調査の結果を発表しました。 (関連記事)


 高すぎる国民健康保険料(税)の滞納などによって、無保険もしくは短期証・資格証明書を交付された人が42例。内訳は無保険25例、短期証10例、窓口で医療費全額をいったん払わなければならない資格証明書7例です。

 社保、国保など正規の保険証を持ちながら、窓口負担の重さなどのため受診が遅れ死亡したと考えられるのは29例で、昨年調査の約3倍です。

 無職や非正規労働者が多く、重症のぜんそくのため高校中退後、非正規の仕事を繰り返し、無保険のまま救急搬送され入院の10日後に亡くなった32歳の男性もいました。1割の窓口負担が払えないと受診を拒んだ84歳男性など、3人の後期高齢者も含まれます。

 調査対象は、全日本民医連の加盟事業所(144病院、523診療所など総計1767施設)。

 特徴は、05年から死亡事例が増えつづけていることです。その原因について全日本民医連は「高い保険料と重い窓口負担が結果的に死亡事例数を増加させた。民医連がここ数年、無料低額診療事業にとりくむ病院・診療所を増やし、経済的困窮に陥った人々への受け皿を広げてきたことも、報告事例増加の一因として考えられる」とみています。

 厳しい雇用・労働環境のもと、死亡事例のうち50〜60代の男性が約7割を占めています。

 疾病別では71例中悪性腫瘍46例、糖尿病8例。がん患者の大半が経済的な困窮のため高い治療費が払えず、末期状態でようやく受診にこぎつけています。

 全日本民医連は、緊急提言として、▽国保の短期保険証、資格証明書の発行をただちに中止し、すべての人に正規の保険証を交付する▽窓口負担を軽減する▽高齢者と子どもの医療費は無料にする、などを求めています。

 長瀬文雄事務局長は、「事例は氷山の一角だと思います。今年は国民皆保険制度がスタートして50年の節目の年です。国や自治体は実態をしっかり調査し、憲法25条にのっとり国の責任で早急に対策をとるべきです」と話しています。

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