2011年3月2日(水)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
エドウィン・ライシャワー。氏がアメリカの駐日大使をつとめたのは、1961年から5年間です。すでに20年余り前に亡くなっていますが、いまだに報道で名前をみかけます▼日本への核兵器持ち込みの密約を認めた人、というだけではありません。先日も、ニュースに登場しました。大使を辞めて明くる年に語った、といいます。「沖縄の軍事施設をグアム島にそっくり移すことは理論的には可能」だが…と▼大使時代のライシャワー氏は、1960年の安保条約「改定」にもとづく日米関係を、アメリカの政権の立場から築こうとしました。日米の経済関係についての当時の発言など、いまもって興味深い▼たとえば62年、“孤立を心配する日本”を慰めています。心配とは、アメリカの貿易圧力の強まりや、欧州共同市場のようなグループづくりに締め出されるおそれ。大使は、日米経済の調和こそが孤立を避ける、と語ります▼両国は前年、経済政策の「くい違いを除く」とうたう安保条約2条をよりどころに、合同の委員会を設けたばかり。さらに、大使は唱えます。アメリカ・日本・カナダを、“太平洋経済組織”のように一つに結びあわせよう―▼50年近くたち、米経済の現実も変わりました。が、孤立を心配する日本につけこみ結ぼうとする環太平洋連携協定(TPP)は、ライシャワー時代からの流れをくんでいます。先月、名だたる108の米大企業と業界団体が、製品売り込みに役立つTPPを結ぶよう、米政府に求めました。