2011年3月1日(火)「しんぶん赤旗」

主張

軍用プロペラ輸出

“アリの一穴”狙う危険な企て


 米国がアフガニスタン軍に供与するC27A中型輸送機用として、北沢俊美防衛相が2月下旬、海上自衛隊の保有する軍用プロペラを米国に売却すると発表しました。防衛省はすでに米軍との契約をすませ、米側の受け入れ準備が整えば引き渡す構えです。

海外輸出は禁止

 民主党政権は、武器の国際共同開発・生産に軍需企業を参加させるため、武器の海外輸出を禁止している武器輸出三原則の見直し作業を加速させています。プロペラ輸出もその一環であり、武器輸出三原則を突き崩す“アリの一穴”にする危険な狙いがこめられており、ことは重大です。

 防衛省が米国に輸出するプロペラは、岩国航空基地を拠点に活動している海上自衛隊が使っている救難飛行艇US1Aの予備部品です。US1Aはもともと対潜哨戒機として開発され使われてきたものです。その後米国からP3C対潜哨戒機を大量に買わされたため、対潜哨戒機から救難飛行艇に転用された海自の軍用航空機です。その部品であるプロペラの輸出が武器輸出なのは明白です。

 武器輸出三原則を具体化し、輸出を禁止する武器について定めた輸出貿易管理令は別表で、「軍用航空機若しくはその付属品またはこれらの部分品」と明記しています。US1A本体はもちろんのこと、プロペラの対米輸出も武器輸出三原則と輸出貿易管理令に対する明白な違反です。プロペラの対米輸出契約は破棄すべきです。

 見過ごせないのは、米国へのプロペラ売却が「アフガニスタンへの復興支援」のためだと北沢防衛相がのべたことです。「米国より提供を依頼された」ともいっています。プロペラ輸出が、米国のいいなりにアフガニスタンで米国が進めている戦争を支援するためだと認めたものにほかなりません。

 海自機のプロペラは、米国がアフガニスタン国軍に譲渡するC27A中型輸送機が使います。アフガニスタンはいまも激烈な戦争状態にあり、毎日多くの民間人が犠牲にされています。米国経由とはいえ、プロペラを輸出することで攻撃力を維持・強化することに力を貸すのは、戦争を助長する役割を果たすことにしかなりません。「国際紛争を助長することを回避」することを目的に確立した武器輸出三原則はもちろん、戦争を放棄した憲法の平和原則に違反するのは明白です。憲法と武器輸出三原則に反するプロペラ輸出をただちにやめるべきです。

「死の商人」の企て

 日本の財界・軍需企業は、F35戦闘機などの国際共同開発・生産に参加するため武器輸出三原則の突き崩しを狙っています。政府も「防衛計画の大綱」でその方向で「検討する」とのべました。企業のもうけを保障するために、日本を他国民の命を奪う「死の商人」国家にする企ては絶対に認めることはできません。

 菅直人政権は、現在は頓挫している自衛隊医官のアフガニスタン派遣の問題でも、今回のプロペラ輸出でも、米政府のご機嫌をとって政権の延命につなげる思惑が露骨です。

 日本が世界のなかで憲法を生かした平和的役割を果たすうえでも、武器輸出三原則を突き崩す“アリの一穴”は絶対に許すことができません。





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