2011年2月28日(月)「しんぶん赤旗」

チリ大地震1周年

住宅・病院・学校の破損

復興の遅れに批判も


 【メキシコ市=菅原啓】南米チリは、昨年2月27日に発生した大地震から1周年を迎えました。ピニェラ大統領は国民に改めて団結を呼びかけていますが、被災者や野党勢力からは復興の遅れに対して厳しい批判の声が上がっています。

 昨年の地震と津波による死者は524人、行方不明者は25人。被災者数は80万人とされています。住宅の倒壊、学校や病院、道路の破損を含め、被害総額は300億ドルと推定されています。特に深刻なのは、住む家を失った22万世帯への住宅提供の遅れです。

 ピニェラ大統領は26日、1年間で7万世帯に対して、被害住宅の修理や新築住宅の引き渡しを実現したと報告しました。大統領は、まだ12万〜13万戸の住宅が不足していることを認めながらも、冬(南半球のため7月ごろ)までにはすべての被災世帯の問題を解決したいと決意を表明しました。

 しかし、津波で被災した太平洋岸タルカウアノ市のサーベドラ市長は25日、市内で必要な住宅数は6000戸なのに、政府支援で建設中の住宅はわずか7戸であると報告。

 全国市長会は同日、復興事業の進展について独自の報告書を発表し、住宅、病院、学校の再建が遅れている問題を批判し、復興事業に地元自治体の代表が参加する仕組みをつくるよう政府に要求しました。

 市長会のアリアガダ会長は、被害を受けた校舎の修理が進まず、「いまだに7万人の生徒たちが短縮授業を余儀なくされている」と語っています。

 被害の大きかったビオビオ州の州都コンセプシオンでは26日、犠牲者を追悼する行進が行われ、約3000人が政府の復興事業の遅れを批判するプラカードを掲げて、市内を練り歩きました。

 同州では最近、州知事が被災者でもない住民に援助金を回していたことが発覚。行進では、事件の真相解明と知事の辞任を求める声も出されました。

 野党勢力は、政府主催の1周年記念行事をボイコットし、独自の行事を開催する構え。

 ピニェラ大統領は、こうした動きに対して「復興を望まない人たちがいる。彼らの唯一の目的は政府を痛めつけることだ」と反論。復興事業をめぐる与野党の対立は激しさを増しています。





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