2011年2月28日(月)「しんぶん赤旗」
主張
世界の軍事産業
「軍産複合体」膨張抑えねば
世界の兵器生産上位100社の2009年(最新)の売上額は前年比8%増の4010億ドルに上った、とストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が発表しました。世界が経済・金融危機に揺さぶられ、途上国を中心に失業と貧困が拡大していたなかで、軍事産業の好調ぶりは際立っています。
米が圧倒的な強さ
軍事費を聖域とし、膨張させる各国の政策に支えられて、軍事産業は肥大化を重ねています。これら企業の利潤追求は各国の財政にムダを押し付けるばかりでなく、軍事紛争を促進しかねない危険もはらんでいます。軍事費を削減し、軍事産業の活動をおさえ込むことは平和を築く上で不可欠です。
兵器販売トップは、F35戦闘機を開発する米ロッキード・マーティン社で、前年の2位からトップに躍り出ました。2位はユーロファイター戦闘機を生産する英BAEシステムズ社で、前年のトップから滑り落ちたものの、販売額は増えています。それに続くボーイング社やノースロップ・グラマン社も売り上げを伸ばしています。
トップから10位までの企業が100社全体の販売額の57%を占め、一握りの企業が軍事産業全体の動向を左右する寡占ぶりです。なかでも米系多国籍企業は販売額の60%以上を占め、圧倒的な強さを誇っています。
米政府はこの間、イラクへの侵略戦争とアフガニスタンでの「反テロ戦争」の戦費をはじめとして、軍事支出を大きく増やしました。それが軍事産業の好調さを支えてきました。しかし、財政赤字が巨額に膨れ上がり、軍事費にも削減圧力が強まっています。
そのなかで軍事産業を支えるのが輸出拡大です。軍事は米国にとって数少ない強い分野であり、オバマ大統領の輸出倍増政策のもと、ますます武器輸出拡大に傾斜しています。武器輸出規制を緩めようとするのもそのためです。
米国防総省が1年前に発表した「4年ごとの国防計画見直し」(QDR)も、現在の武器輸出承認は「米国産業の競争力を妨げている」と指摘していました。
エジプトでムバラク政権が崩壊したことから、米国が同政権に長年巨額の軍事援助をしてきたことが問題になっています。しかし、オバマ政権はこうした政策全体を見直すのではなく、個別の検討にとどめる意向です。米国の対外軍事援助も米軍事企業の利益として還流してきました。
日本では、菅直人政権が航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)の機種を今秋にも決めようとしています。米国がF35、欧州がユーロファイターの売り込み攻勢をかけるなか、F35を軸に選定作業が進む可能性が強まっています。
各国のF35調達は大規模なものになる見込みで、日本の軍事産業も米国との共同開発に乗り出しています。
警告からの半世紀
「巨大な軍の体制と大規模軍事産業との結合が持つ経済的、政治的、精神的影響は全米の都市、州議会、連邦政府のすみずみに及んでいる」。アイゼンハワー米大統領が退任演説で「軍産複合体」の膨張を警告し、軍縮の必要を指摘してから半世紀がたちます。しかし、「軍産複合体」の膨張に歯止めはかからず、警告の重大さはいっそう強まっています。