2011年2月28日(月)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 「きょうもこなかった/知的障害ゆえに/友だちはいない 便りも来ない」。2000年4月、本紙「読者の文芸」欄に載った、福岡県小郡市に住む三牧亨さんの詩です▼あてもなく誰かの便りを待つ息子、英範さんをうたう詩に胸を締めつけられ、「絵手紙をおくろう」と思いついた人がいました。兵庫県芦屋市の永井喜代子さん。さっそく初便りをポストに入れます▼両手を広げてあいさつする優しそうなピエロの絵。「絵手紙一年生です。一生けんめい描きますので、お友達になって下さいね」。さあ大変、「やった!」と跳びはね喜ぶ英範さん。亨さんから字の特訓を受け、返事を書きます。「三牧英のりとかいてあったので、うれしかったです…」▼以来、交流が続きます。永井さんがカニを食べると、大きなカニの絵でおすそ分け。“憲法九条を守ろう”“核兵器をなくそう”と訴えると、亨さんが英範さんの読み解きを助けます。やがて英範さんは、詩の中で問います。「どうして戦争するのだろう…」▼この間、永井さんは二つの大病を乗り越えました。「絵を描くことが生きる力になった」。英範さんについては、亨さんが振り返ります。眠っていた心に灯がともり、気持ちを伝えたい思いが言葉と文字を獲得し、言葉は詩となった、と▼いま80歳の永井さんと37歳の英範さん。永井さんは、交流を『心のかけはし―絵てがみ10年の筆あと』(清風堂書店)にまとめました。2人の懸け橋が、読む人の心にも灯をともすでしょう。





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