2011年2月26日(土)「しんぶん赤旗」

主張

「1票の格差」

「法の下の平等」貫く是正を


 昨年の国勢調査の速報値にもとづいて総務省が試算した結果、人口を基準にした「1票の格差」は衆院の小選挙区では最大2・524倍、参院の選挙区では5・126倍にも上っていることが明らかになりました。憲法が保障する選挙権の平等に照らして、格差是正は一刻も放置できない状態です。

 各地の裁判所でも、一昨年の総選挙や昨年の参院選挙について「違憲違法」や「違憲状態」と認める判決が相次いでいます。小選挙区の区割りや定数の配分を調整するだけでなく、衆参の国政選挙の制度そのものに踏み込んだ見直しが不可欠です。

「1人1票」が大原則

 総務省の試算では、衆院の小選挙区(定数1)で最も人口が多い千葉4区と最少の高知3区の格差は2・5倍を超えているだけでなく、格差が2倍を超える選挙区が全体の3分の1近い97選挙区にのぼります。選挙制度そのものが行き詰まりに直面していることを示すものです。参院の選挙区では議員1人当たりで最大の神奈川県(定数6)と最少の鳥取県(同2)の格差が5倍を超えるという、まったくの異常事態です。

 日本国憲法は前文で「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」と定め、選挙人の資格は「人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない」(第44条)と明記しています。また憲法14条は「すべて国民は、法の下に平等であつて…差別されない」と、「法の下の平等」を原則としています。国民ならだれでもどこでも投票は「1人1票」が大原則で、2票分の投票や5票分の投票などは絶対許されるものではありません。

 衆院の小選挙区の区割りや小選挙区で選ばれる議員定数の各都道府県への配分は、国勢調査の結果で変更されます。しかし、格差が2倍を超す多くの選挙区で区割りの変更が必要になる上、総務省の試算で徳島や高知の小選挙区の定数配分は現在の3から2に減ることになるなど、手直しだけでの格差是正は簡単ではありません。参院の選挙区選挙はもともと3年ごとの半数改選のため、最低でも2以上の偶数定数が必要で、いまの制度のままで5倍を超える格差を是正するのは困難です。

 各地の裁判所でも、衆院小選挙区の定数配分方法の見直しや参院の選挙区選挙のあり方など、選挙制度そのものに踏み込んで見直しをもとめる判決があいついでいます。「1票の格差」の解消は民主主義を貫くうえで最優先の課題であり、そのためには現在の制度の枠内で手直しするのでなく、選挙制度のあり方に踏み込んで検討するのを避けることはできません。

比例代表選挙を中心に

 もともと小選挙区制は、議席に結びつかない「死に票」が多い非民主的な選挙制度です。民意を乱暴にゆがめる衆院の小選挙区は直ちに廃止し、現在の全国11ブロックの比例代表選挙で選出できるようにすべきです。中選挙区制に戻すことも検討すべきです。

 各党で検討が始まっている参院の選挙制度を含め、国民の意思と選択を議席に正確に反映できるのは比例代表選挙です。比例定数を大幅に削減し、国会から民意を切り捨てるなどという策動は、絶対認められるものではありません。





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