2011年2月20日(日)「しんぶん赤旗」
TPP交渉“米国主導 貫け”
米政府に大企業連合が圧力
製品売り込み “障害なくせ”
米国を代表する108の大企業、業界団体が環太平洋連携協定(TPP)交渉に関して米政府に要求書を提出し、米国製品売り込みに支障をきたすような妥協をしないよう米国が交渉を主導すべきだと圧力をかけていることがわかりました。
要望書をまとめたのは「TPPのための米国企業連合」。米国のTPP加入を政府に働きかけている団体です。アグリビジネス(農業関連大企業)、軍事、電機、IT(情報技術)、通信、金融、製薬などほとんどの産業の大手企業、業界団体が名を連ねています。3日付でホワイトハウスに提出されました。
要望書は、TPP交渉の結果が米国の産業界にとって「死活的」だと強調しました。その上で「他国が米国の製品、サービスを拒むのに利用できるような、より低い基準、低い市場開放、抜け穴に米国を同意させようとする呼びかけに最高指導者は抵抗すべきだ」として強硬な姿勢を貫くようオバマ大統領に要求しました。
「すべての重要分野で高いレベルの結果を出せるよう米国が交渉を主導することが決定的だ」と述べ、市場開放を含め六つの分野で特に重視すべき要求を挙げました。
同連合は昨年9月には「TPPの原則」と題する文書を発表しています。「例外を設けることは米国の農業者、製造業者、サービス業者が新しい市場に事業を拡大する機会を制限することになる」と、もっぱら米国企業の利益拡大の立場から市場開放を求めました。
今後TPPに参加しようとする国は「元の協定に盛り込まれた高い基準と市場開放の条項に例外なく従うべきだ」として、米国が入って決めた協定に日本なども従わせようとしています。
菅直人政権は、TPPで「アジアの成長を取り込む」といいますが、TPPの実体は米国の大企業に製品やサービスの売り込み先を提供するものであることが明らかになりました。
「TPPのための米国企業連合」のTPPに対する要求
〈市場開放〉
すべての分野、いかなる形の貿易をも含む包括的なものでなければならない。原産地規則は柔軟であるべきだ。米国産業に対する既存の市場開放を後退させてはならない。
〈知的財産権〉
知的財産権は米国の経済成長と雇用を支えている。知的財産権の保護規定は米国がTPP諸国と結んだ既存の通商協定に基づくべきだ。
〈投資〉
米国の対外投資にとって安定した非差別的な法的環境の典型をつくり出すために、強力な投資保護、市場開放規定、紛争解決を組み込むべきだ。
〈簡素化された貿易〉
物品、サービスがTPP加盟国間で生産から供給に至るまでタイムリーで効率よく安全に移動でき、米国の産業と労働者に経済的機会を提供するものであるべきだ。
〈規制の統一〉
TPPは規制による障壁という21世紀の貿易に対する主要な問題に立ち向かうべきだ。
〈公正な競争〉
反汚職の規定が必要。国有企業と民間企業、外国企業が一つのフィールドで競争することを保証すべきだ。
TPPのための米国企業連合
「TPPのための米国企業連合」の要求書に名を連ねた主な企業、業界団体は次の通り。
AT&T(通信)、ベクテル(建設)、ボーイング(航空・宇宙・軍事)、カーギル、モンサント(以上農業関連)、キャタピラー(建設機械)、シェブロン(石油)、シティグループ(金融)、コカコーラ(飲料)、ダウ・ケミカル(化学)、フェデックス、ユナイテッド・パーセル・サービス(以上運輸)、ゼネラル・エレクトリック(電機・金融)、ヒューレット・パッカード、IBM(以上コンピューター)、インテル(半導体)、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ファイザー、アボット・ラボラトリーズ(以上医薬品)、リーバイ・ストラウス(アパレル)、マイクロソフト、オラクル(以上ソフトウエア)、タイム・ワーナー(メディア・娯楽)、ウォルマート・ストアーズ(小売り)
米国商工会議所、全米製造業者協会、先進医療技術協会、アメリカ生命保険会社協議会、アメリカ大豆協会、サービス産業連合、トウモロコシ精製協会、米国蒸留酒協議会、IT産業協議会、全米豚肉生産者協議会、全米小売連盟、アメリカ医薬品研究製造業者