2011年2月19日(土)「しんぶん赤旗」
主張
鳩山前首相“方便”発言
日米合意は白紙撤回しかない
鳩山由紀夫前首相が、沖縄の米海兵隊普天間基地を「国外、最悪でも県外」に移すとの総選挙中の公約を裏切って「県内移設」を米と合意したことについて、日本を守る「抑止力」だからと説明したのは後付けの“方便”だったと発言して、議論を呼んでいます。
海外に殴りこむ米海兵隊が日本を守る「抑止力」などでないのは明白です。菅直人首相や北沢俊美防衛相は、米海兵隊を「抑止力」とする立場に固執して発言を打ち消そうとしていますが、前首相の発言は重大です。民主党政権は「県内移設」の日米合意を白紙撤回し、無条件撤去を実行すべきです。
謝罪も“方便”だったか
鳩山氏の発言は沖縄の地元紙などでおこなわれたもので、鳩山氏はその後も、在日米軍全体では「抑止力」だが海兵隊だけでは「抑止力」ではないなどと説明し、発言は撤回していません。“方便”とは「ウソも方便」のたぐいで、総選挙中の公約に違反しながら今になってその根拠は“方便”だったと言い出すのは無責任のきわみです。沖縄に新しく基地を押し付ける重大問題がこれほど軽々に扱われること自体、絶対に許されることではありません。
沖縄県民の怒りは沸騰しています。もともと米海兵隊普天間基地は米軍でさえ「世界一」と認める危険な基地であり、その閉鎖・撤去は地元・宜野湾市民をはじめ沖縄県民の悲願でした。日米両政府も14年も前に撤去を合意しながらそれが実現してこなかったのは、日本政府が米国いいなりで「移設」先探しに固執したからです。普天間基地の閉鎖・撤去を求める沖縄県民の世論は、いまや引き返せないところへ来ています。
沖縄県民は、「移設」先とされた名護市辺野古などでも新しい基地の受け入れを拒否しており、民主党が一昨年の総選挙で「国外・県外」を公約したのもその意向が無視できなかったからです。民主党政権は口では公約違反を県民に謝罪するといいますが、「県内移設」に固執する限り、その謝罪も“方便”かといわれるのは当然です。
菅首相や北沢防衛相は鳩山氏の発言後も、国会答弁で沖縄の米海兵隊が「抑止力」だという立場を繰り返しています。しかし、普天間基地の米海兵隊がイラクでもアフガンでも米国が戦争を起こすところには一番に駆けつける「侵略力」であることはどんなに否定しようとしても否定されない事実です。前首相が“方便”だったと認めてもなお「抑止力」論にしがみつくのは、普天間基地の「県内移設」を求める米国に、民主党政権が全面屈服し、モノもいえないからだといわれても仕方ありません。
米に頼って政権維持する
日本共産党の赤嶺政賢議員が16日の衆院予算委で追及したように、菅首相自身、野党時代には沖縄の米海兵隊を「抑止力」とは認めていなかったことも見過ごせません。それが首相になって見解を変え、前首相が「抑止力」論を否定してもなお固執するのは、米国の支持を頼りに政権を維持していることを浮き彫りにするだけです。
いくら“方便”でごまかしても、米海兵隊が日本を守るなどという言い分はもはや通用しません。日米合意は白紙撤回すべきであり、総選挙での公約に反し、普天間基地を沖縄から撤去しない民主党の責任が問われるのは必然です。
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