2011年2月17日(木)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
「うそも方便」といいます。しかし「方便」はもともと、古代インドから伝わった仏教の言葉です▼人々を仏の道に導くためのすぐれた教えの方法、巧みな手段をさしました。「近づく」や「達する」が、本来の意味らしい。いまでは、目標に達するためにとりあえず利用する仮の手だての意味で広く使われています▼鳩山由紀夫氏が首相時代、“抑止力という言葉を方便に”と考えた時、目標は普天間基地の名護市辺野古への「移設」でした。しかし、それは「うそも方便」のたぐいでした。沖縄の地元紙などで“抑止力は方便”と白状した鳩山氏自身、いまもアメリカ海兵隊は「抑止力」でないと「理解する」と語るのですから▼「(海兵隊は)抑止力でないとみなさん思われる。私もそうだと理解する」。鳩山氏のいう「みなさん」の中に、かつては菅首相も入っていました。「(沖縄から)海兵隊がいなくなると抑止力が落ちるという人がいますが、海兵隊は守る部隊ではありません。地球の裏側まで飛んでいって、攻める部隊なのです」と菅氏▼さらに、「沖縄に海兵隊がいるかいないかは、日本にとっての抑止力とあまり関係ない」。赤嶺政賢衆院議員がきのうの国会で、いまは逆を説く首相の方便をつきました。ほんの5年前の発言です。菅氏の場合、5年前の言葉が政権をとるための方便だったのか、いまが鳩山氏をひきついだ方便なのか▼人々の心を方便でもてあそぶ。うそも方便による辺野古案は、いずれ崩れ去る定めでしょう。