2011年2月16日(水)「しんぶん赤旗」
主張
米軍ヘリパッド建設
たらい回しやめて計画撤回を
政府は、沖縄県北部の東村(ひがしそん)高江に、米軍ヘリのためのヘリパッド(ヘリコプター離着陸帯)を建設する工事を強行し、住民のはげしい怒りを買っています。
昨年重機や資機材を運び入れた防衛省は、沖縄にとって大切な旧正月の3日も大量の職員と作業員とダンプ2台を動員し、工事をすすめました。高江区の住民が話し合いを求めているのに耳も貸さず、問答無用とばかりに工事を強行するのは重大です。基地の「負担軽減」といいながら、住民に苦しみを押し付けるやり方に怒りが強まっているのは当然です。
環境も生活も破壊する
ヘリパッド建設計画は日米特別行動委員会(SACO)合意にもとづき、北部訓練場の一部返還を口実にして、六つのヘリパッドを高江に追加建設するというものです。既存の15とあわせ21ものヘリパッドが集中し、負担は増大します。県民は北部訓練場の返還を求めています。それを無視して、ヘリパッドを高江に「たらい回し」にするのは許されません。
高江区の住民にとって重大なのは、六つのヘリパッドが高江区を取り囲み、一番近いところはわずか400メートルというように住宅に近いところに建設されることです。こんな近くでヘリが飛べば耐え難い爆音が住民を直撃するのは目に見えています。いまでもヘリは夜10時を過ぎても住宅上空を低空で飛び、夜間にはライトで住宅などを照らしながらの訓練を行っています。新たなヘリパッドができれば住民はより深刻な事態を押し付けられるのは明らかです。
ヘリパッド建設が「東洋のガラパゴス」といわれた山原(やんばる)地域の貴重な自然を破壊するのも重大です。ヤンバルクイナをはじめとする4000種もの野生生物が生息するのはここがひとつながりの自然林だからです。「米軍の運用上の必要」(防衛省)で、山原の自然を分断、破壊するなど言語道断です。
防衛省はヘリが住宅や学校の上を飛行しないといいますが、騒音規制の約束すら守らない米軍と、米国にモノもいえない政府の言い分はまったく信用できません。
墜落事故も多く、騒音も大きな最新鋭輸送機のオスプレイがヘリパッドを使うことも大問題です。日本共産党の赤嶺政賢衆議院議員に対して北沢俊美防衛相は、オスプレイのヘリパッド使用を「可能」と答弁しています。ヘリパッド建設が住民にさらに大きな痛みを押し付けるのは明白です。
憲法は国民に健康で文化的な生活を保障しています。住民を苦しめるヘリパッドの建設はきっぱりやめるのが当然です。
住民要求米側に伝えよ
北部訓練場は普天間基地のヘリ部隊の訓練場です。普天間基地を撤去させるうえでもヘリパッド建設を認めるわけにはいきません。政府が住民の話もきかずにヘリパッド建設工事を強行するのは、SACO合意の実績作りを「先行」(北沢防衛相)させることで米政府の機嫌をとり、同時に頓挫している普天間基地移設問題を前に進める条件をつくるのが狙いです。しかしこれでは基地の重圧をなくしたいという県民の願いに応えることはできません。
高江区住民の願いに応え、ヘリパッド建設の中止を求め米政府と正面から交渉することこそ唯一の解決方法です。
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