2011年2月15日(火)「しんぶん赤旗」

GDPマイナス

大企業は好業績 個人消費は大幅減

輸出頼み 限界

賃上げ・雇用確保がカギ


 内閣府が14日発表した2010年10〜12月期の国内総生産(GDP)は、実質、名目ともに5期ぶりのマイナス成長となりました。マイナス成長の背景に日本経済のゆがみが見えてきます。


 今期、GDPがマイナス成長となった最大の要因は、個人消費が大幅減となったためです。GDP成長率に対する寄与度をみると、内需は実質0・2%減(名目0・6%減)でした。前期が実質1・0%増(名目0・7%増)だったことと比べると、内需は著しく後退しています。

 景気対策として行われたエコカー補助金が9月初旬に終了したことが自動車販売を引き下げました。家電エコポイント半減の直前には、テレビや冷蔵庫といった対象商品の売り上げが増加しましたが、12月1日以降は急減。内閣府の資料では、12月の家電売り上げは、薄型テレビが前年同月比50・8%減、エアコンが30・7%減、冷蔵庫が33・1%減です。

 昨年12月の景気ウオッチャー調査には、「エコカー補助金終了後の反動が年末にかけてピークを迎えており、来客数は依然として前年比70%と減少傾向で、新車、整備部門ともに収益性を欠いている」(東北・乗用車販売店)、「エコカー購入補助金制度の終了による販売量の減少が著しく、前年比5割程度」(四国・乗用車販売店)などの声が紹介されています。

 原材料価格の高騰も業者の営業に悪影響を与えています。景気ウオッチャーには、「原材料価格が上昇しており、運転資金的に厳しい部分があるようである。販売価格に転嫁することが厳しい」(南関東・金融業)との声があります。

正規雇用ふえず

 エコカー補助や家電エコポイントなどの企業活動支援策で、確かに企業業績は良くなりました。上場企業の経常利益は前年同期に比べ24%増と、5四半期連続の増益です(2月5日付「日経」)。問題は企業が利益をあげても、経済が自律回復していないことです。

 10〜12月期の雇用者報酬は前期比0・3%減(名目)となりました。10年全体では、リーマン・ショックによる景気後退の影響を受けた09年を0・8%上回ったものの、253兆3803億円でした。バブル崩壊直後の1992年以来の低水準です。個人消費が回復しない最大の要因は、企業のもうけが働く人々の賃金に回らないためです。

 総務省の労働力調査詳細集計によると、製造業では10年7〜9月期に正規雇用が前年同月比39万人も減少する一方で、非正規雇用は12万人の増でした。大企業は、エコカー補助や家電エコポイント制度に伴う増産を非正規雇用を増やすことで対応し、正規雇用には結びつかなかったことがうかがえます。

内部留保活用を

 財界の求めに応じて、大企業には減税し、「アジアの需要を取り込む」とする輸出主導の路線の破たんは明らかです。日本経済の回復のためにはGDPの55%を占める個人消費が増大することがカギです。そのためには、賃上げが欠かせません。大企業は244兆円もの内部留保をため込んでおり(09年度)、その一部を使うだけで可能です。

 日本共産党は、次のような政策を提案しています。

 (1)労働者派遣法を抜本改正して非正規社員を正社員にする(2)中小企業にきちんと手当てをしながら最低賃金を時給1000円以上に引き上げる(3)雇用の7割を抱える中小企業を本格的に支援して大企業の労働者との賃金格差をなくしていく(4)日本航空のような無法解雇をやめさせて解雇規制のルールを強化する。

 疲弊した地域経済を立て直すためには、地域に根ざした中小企業、地場産業、農林漁業を総合的に支援することが必要です。

 賃金を上げ、安定した雇用と仕事をつくりだすことで、個人消費は増大します。日本経済全体が回復し、経済の「閉そく状況」が打破できます。(清水渡)

グラフ

急成長 中国2位に

 2010年の日本の名目GDPは479兆2231億円(約5兆4742億ドル)でした。一方、中国は39兆7983億元(約5兆8786億ドル)。日本は1968年以来、維持してきたGDP世界2位を中国に譲り、43年ぶりに3位になりました。

 大企業頼みの日本の経済成長が停滞する間に、高成長を続ける中国が日本を抜くことは確実とみられていました。

 とはいえ、中国の人口は日本の約10倍。国民1人当たりGDPは日本の10分の1程度と、まだ大きな開きがあります。中国国内でも、地方別の住民1人当たり域内総生産は、最高の上海市と最低の貴州省で10対1の格差があります。先進国と大差ない経済水準の大都市と水道など生活インフラさえ整わない農村が併存しています。日本を抜いたことで優越感にひたる声は中国であまり聞かれません。

 ただ、中国が急速に豊かになっていることは事実です。国際通貨基金(IMF)によると、物価水準の違いを考慮した購買力平価換算で、日中の1人当たりGDPの差は4対1に縮まっています。経済的に発展する中国とどう付き合うかは日本にとって今後ますます大きな課題です。(前北京特派員・山田俊英)

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