2011年2月15日(火)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
休日にぶらりと立ち寄った古本市で目にとまった本がありました。『二・二六事件と郷土兵』。30年前、埼玉県の県史編さん室が編集したもの。1936年2月26日に発生した陸軍青年将校の反乱事件に巻き込まれた埼玉県出身の下士官、兵士たちの手記です▼序文で畑和知事(当時)が発刊の動機について述べています。将校ではなく、兵士の立場から見た事件を記録に残すことは貴重な資料であり、後世に伝えたいと▼約70人の手記からは、上官命令が絶対の軍隊でいや応無く巻き込まれた姿が浮き彫りに。多くの人が二・二六事件だけでなく、無謀な侵略戦争に突き進んだ軍部や政治家に怒りを向けています。「政治が悪いと全てが狂ってしまうものである。これは現代でも同様のはずだ」(元2等兵)▼最近、二・二六事件を引き合いに出したのが民主党の小沢一郎元代表です。同事件は「生活第一」の政治の任務を果たせなかった結果であり、菅政権にも国民の不満が高まっている、と▼菅政権の体たらくは見ての通りですが、小沢氏に批判する資格があるのかは疑問です。まずは、自身も元秘書も起訴された陸山会事件について国会の場で説明すべきでしょう。「政治とカネ」の問題は、「政治活動の公正と公明を確保」(政治資金規正法)するという民主主義の根幹です▼世論調査でも、小沢氏の態度を批判する声が圧倒的です。政治不信が広がった責任は小沢氏にもあります。痛苦の歴史を我田引水に持ち出している場合ではありません。