2011年2月15日(火)「しんぶん赤旗」

主張

10〜12月期GDP

健全な経済成長は賃上げから


 国内総生産(GDP)速報によると、昨年10〜12月期の実質成長率は前期比で0・3%減、年率換算で1・1%減と5四半期ぶりのマイナス成長となりました。

 その最大の要因は、GDPの過半を占める家計消費が年率3%の減少となったことです。輸出も欧州向けが低迷し、アジア向けも伸びが鈍化して7四半期ぶりのマイナスとなりました。

成長止まり財政も悪化

 家計消費は長期にわたる所得の減少傾向で低迷から抜け出せていない上に、「エコカー」補助金の終了やたばこ増税前の“買いだめ”の反動が影響しました。

 「エコカー」補助金や家電「エコポイント」は「エコ」の名で大手製造業を応援することを狙った景気対策です。所得減少で家計と内需が冷え込んでいるときに、いくら大企業向けの対策を打っても安定成長に結びつかないことをGDP速報は改めて示しました。輸出頼みの限界も明らかです。

 2010年の日本の名目GDPは、すでに発表されていた中国の名目GDPをドル換算で下回り、43年ぶりにアメリカに次ぐ世界第2位から滑り落ちました。内閣府の推計では中国はあと十数年でアメリカにも追いつく勢いです。

 昨年の中国の1人当たりGDPは日本の10分の1程度にとどまっています。しかし「新興国」、とりわけアジア経済の比重が急速に高まっていることは世界経済の重要な変化です。民主党政権が米国中心の経済連携協定(TPP)への参加を進め、食料・経済主権を売り渡して対米追従を強めようとしていることは大きな時代錯誤というほかありません。

 日本経済の問題は、中国に追い抜かれたということよりも、過去十数年にわたって成長が止まってしまったままという世界でも異常な事態にあります。

 昨年の名目GDPは479兆円で、過去最高を記録した1997年と比べると36兆円、7%も減少しています。昨年の水準は92年と同じ水準であり、18年前に逆戻りしたようなものです。

 日本だけが長らく経済成長から取り残されているという異常な状況を是正しない限り、経済の発展はもちろん、政府債務残高の問題も解決しません。

 財政危機の打開には大企業・大資産家への行き過ぎた減税を是正して応分の負担を求め、「税収空洞化」の穴を埋めることが不可欠です。同時に経済成長の影響も無視できません。1990年以降の政府債務残高の増加率は日本が2・8倍、ドイツ2・6倍、フランス3・3倍と大差がない水準です。ところが、対GDP比の債務残高は日本だけが突出して悪化しました。その大きな原因は分母に当たるGDPの成長が止まってしまったことにあります。

“生きたお金”に変えて

 GDP統計によると働く人の所得(雇用者報酬)は97年と比べて25・6兆円も減っています。その一方で大企業の内部留保は約100兆円増加して244兆円に膨れ上がっています。

 国民が汗水流して働いても大企業が利益を独り占め―。この構造を転換し、“死んだお金”を日本経済に還流させて“生きたお金”に変えることが必要です。

 雇用や中小企業を守るルールを確立して賃金の引き上げを進める経済戦略が求められます。





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