2011年2月13日(日)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 透き通る青い海は、ダイバーのあこがれの的です。紅海をのぞむエジプトの保養地シャルムエルシェイクに、世界中から観光客がやってきます▼大統領の権力の座を追われたムバラク氏は、首都カイロから逃げるようにシナイ半島のこの町へ移りました。カイロの町をうめつくす人々の祝祭の夜が、興奮のうちに更けてゆく。「私たちに武器はなかったが意志があった」と、市民たち▼シャルムエルシェイク。6年前の05年に、よく名前を聞いた町です。7月、爆弾テロがその日のうちに88人の命を奪いました。市民は、テロに抗議し立ち上がります。そして今、テロにくみせず武器に頼らない全土の市民が、強権をふるう政権をついに倒しました▼テロ事件の半年近く前、同じ町で中東4首脳会議がありました。イスラエル、パレスチナ、ヨルダン首脳にムバラク氏。イスラエルとパレスチナの停戦を宣言しますが、和平は今も達成されていません。ムバラク氏は、親米派の代表格として重きをなしていました▼やはり05年、そのアメリカ・ブッシュ大統領(当時)のシャルムエルシェイクでの発言が報じられました。アフガン、イラクへの侵攻は「神に命じられた」。中東を思いのままにしたい米政権です▼ムバラク政権を残そうとして失敗し、急に“いい子”ぶって民主化の助っ人のようにふるまう米政権。みずからの力で歴史を変えたと喜ぶ市民たちには、迷惑な話でしょう。政権崩壊の夜、「エジプトは自由だ」の声が国中にあふれました。





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