2011年2月12日(土)「しんぶん赤旗」
「知恵絞った」 与謝野氏の“脅し策”
“社会保障財源は消費税だけ”
菅政権がすすめる「税と社会保障の一体改革」の中で、消費税を社会保障目的の特別会計とする方向が打ち出され、社会保障の財源は消費税だけとするかのような論法が横行しています。
子ども手当も
菅直人首相自身が、昨年の参院選で「お年寄りの年金、医療、介護に17兆円かかっている。消費税を全部あてているが10兆円足りず、国の借金でまかなっている。このままでは財政破綻だ」と、足りない分を消費税増税で埋めなければならないかのように持ち出した論法です。
7日の衆院予算委員会では、民主党の小川淳也氏が「いま社会保障費だけで80兆円。消費税を25%にしても50兆円しか出てこないので、社会保障給付費の2割削減が求められている」と発言しました。
8日には、「税と社会保障の一体改革」を担当する与謝野馨経済財政相が、消費税を充てる対象には「当然、『子育て』も入る」と答弁。将来、子ども手当も消費税で充当する可能性を示しました。
財務省と綿密に
こうした議論の源は、自公政権時代、いかに国民に消費税増税を「納得してもらう」か「知恵を絞った」という“与謝野・柳沢案”にあります。与謝野氏が会長、柳沢伯夫元厚生労働相が座長となって立ち上げた自民党財政改革研究会の2005年の中間報告です。
与謝野氏の著書『民主党が日本経済を破壊する』によれば、「我々と財務省は綿密にすり合わせを行った」うえで、「『社会保障目的税化』を初めて正面から打ち出した」といいます。
与謝野氏は、目的税にする「意義」を、(1)世論の消費税増税への理解を得やすくする(2)社会保障支出を増やすなら「消費税率か保険料を増やすという形で受益と負担の対応がはっきりする」―ことだと解説しています。
財政改革研究会の07年の「中間とりまとめ」では、財政を社会保障と非社会保障に2分割し、社会保障部門は「給付に見合った負担」を求めることを盛り込んでいます。
与謝野氏は著書で、今後は、社会保障の水準は消費税率で決まるものになり、「ほかの分野の歳出削減がどの程度進んだか」とは「関係がなくなる」とのべています。庶民増税の一方で、無駄な大型公共事業や軍事費、大企業・大資産家への減税バラマキを野放しにするやり方です。
菅内閣は、“与謝野・柳沢案”どおり、消費税を社会保障目的税とし一般会計とは別勘定にすることを基本方向としています。使い道の範囲を、基礎年金・高齢者医療・介護の「高齢者3経費」とするか、子育てや現役世代の生活保護などにも充てるか、が議論になっています。
与謝野氏の狙いどおり「社会保障を維持したければ消費税の大増税だ」と国民は脅されることになります。現実には、消費税増税のうえに、社会保障は切り捨てになることは必至です。
政治の役割は
本来、国民生活の保障こそ政治の役割です。社会保障費を真っ先に確保することは、憲法が定める国の責務であり、財政全体で社会保障を支えるのが当然です。
生活に必要な最低限の所得も得られない人にも容赦なく、より重くかかる消費税は、社会保障財源に最もふさわしくありません。税金は支払い能力に応じた負担が原則です。「貧困と格差」が広がる今こそ、この原則がいっそう重要となっています。(西沢亨子)