2011年2月12日(土)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 今年は、芸術家・岡本太郎の生誕100年になります。「芸術は爆発だ」など多くの名言を残した岡本太郎。この人による大阪万博の「太陽の塔」を、高度成長時代のまばゆさと共に思いだす人も多いでしょう▼でも、高度成長の裏側で、こんな歴史の一幕があったと知ったのは、新国立劇場で再演中の舞台「焼肉ドラゴン」を見てでした。「在日」の劇作家・鄭義信さんによる「在日」の物語。万博に沸く関西地方の在日コリアンの集落を舞台に、「小さな焼肉屋の大きな歴史」を笑いと涙にくるんで描きます▼店の主人であるアボジ(父)は、韓国が日本の植民地であった時代に移り住み、戦争で片腕を失っています。戦後、故郷の済州島に帰ろうとしますが、そこも1948年に起きた島民大虐殺事件(四・三事件)で身内は全滅、という設定です▼戦争、朝鮮半島の南北分断…。鄭さんは、日本と韓国の二つの国に捨てられ、歴史に翻弄(ほんろう)され続けた「在日」が、どんな思いで生きてきたかを、演劇というかたちで記録しました▼その思いは、国有地であることを理由に、店の立ち退きを迫られるアボジのこんなせりふにも…。「戦争に無理やり狩り出したんやないか! 土地を奪うんやったら、この腕を返せ! いますぐ返せ!」▼哲学者・高橋哲哉さんの著書『戦後責任論』に「記憶し、その記憶を伝える責任」という言葉があります。岡本太郎氏もベトナム戦争の折、ワシントン・ポスト紙の意見広告にこんな言葉を提供しています。「殺すな」





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