2011年2月12日(土)「しんぶん赤旗」
主張
自然災害続発
高齢者の犠牲増やさぬ対策を
日本列島はこの冬、相次いで深刻な自然災害に見舞われています。北海道から北陸、山陰にかけての日本海側は、例年をはるかに超える豪雪で、交通まひや雪下ろしなどでの被害が続出しました。一方、九州では霧島山の新燃岳の噴火で降灰などの被害が続いています。
もっとも懸念されるのは、豪雪でも噴火災害でも、一人暮らしなどの高齢者の被害が相次いでいることです。自然災害から国民を守るのは国や自治体の仕事ですが、とりわけ高齢者や障害者などの被害を防ぎ、犠牲を増やさぬ対策がつくされる必要があります。
個人の力で防げない
豪雪や火山の噴火など自然災害は、現在の予報や予測の技術では完全に防ぐことのできないものです。しかも個人の力だけで、自然災害に対処するのは不可能です。
一夜で何十センチも降り積もる豪雪は道路を閉ざし、家々を押しつぶします。とくに日本海側の湿った重い雪は運ぶだけでも重労働です。少し暖かくなれば、雪崩や雪解けによる出水の危険もあります。国と自治体の責任による除雪や被害防止などの対策が不可欠です。
火山列島の日本で頻発する噴火災害も、降灰などによる農業被害が広範囲に及ぶだけでなく、噴火が大規模になれば噴石や溶岩流の危険、土石流の危険も高まります。国や自治体が住民に情報を周知徹底し、避難や降灰除去などの対策をとることが必要です。
この冬、豪雪や噴火災害に見舞われた東北や北陸、南九州などは、過疎化や高齢化が深刻な地域です。そうした地域で高齢者の被害はとりわけ深刻です。働き盛りの人でも難しい、屋根に上っての雪下ろしや降灰除去の作業は、高齢者には不可能です。軒先の雪や灰を始末しようとしても、曲がった腰や痛む手足ではままなりません。屋根を見上げ、ため息をつくばかりで、大量の雪や灰を前に立ち尽くす高齢者の姿は、胸が締め付けられるものがあります。
現に高齢者の犠牲は深刻です。豪雪による死者は2月初めまでで107人に達していますがそのうち70人が65歳以上です。うち57人が屋根の雪下ろしや除雪作業中亡くなった人です。高齢者の犠牲を繰り返さないために行政が抜本的な支援を強めることは急務です。
高齢者だけでなく、ふだん自立して生活している障害者などの中にも、移動に車椅子や杖(つえ)が必要なため、豪雪や降灰で身動きがとりにくくなっている人がいます。現に困っている人たちのための手厚い対策をとるのは、国や自治体にとって最優先の課題です。
国が先頭に立ってこそ
深刻なのは、かつては個人や行政だけでは足りないところを近所の助け合いで補ってきた除雪などの作業自体が、過疎化や高齢化で困難になっていることです。
そうした困難を埋め合わせるためには、行政側の対策と工夫がいよいよ求められます。一部の豪雪地帯では冬の間だけ一人暮らしなどの高齢者が共同生活できる場を確保したり行政が土建会社などに呼びかけてボランティアを組織したりしているところもあります。
もちろん自治体任せではことは解決しません。国が全国どこでも住民の命と安全に責任を持つ立場を貫き対策を取ってこそ、地方と地域の力も生きてきます。