2011年2月11日(金)「しんぶん赤旗」

主張

公約投げ捨て

なりふり構わぬ国民への背反


 A=消費税の引き上げを掲げて解散・総選挙を―。B=解散・総選挙の前に消費税を含む税制抜本改革の方針を示す―。

 今国会での民主党政権と自民党のやりとりです。どっちがどっちか、分かるでしょうか(Aが自民党、Bが民主党政権)。

 民主党政権は米軍普天間基地や消費税増税、社会保障をはじめ肝心要の問題で公約を投げ捨てています。2009年の総選挙で退場の審判を受けた自公政権に代わって国政のかじ取り役に就いた民主党政権は、すっかり自民党政治にUターンしてしまいました。

葬り去った「対決軸」

 政権が社会保障を口実に消費税を増税しようとしていることには与党からも批判が出ています。「社会保障の見直しには増税が必要だというのはほとんど説教強盗だ」(田中康夫新党日本代表)

 その社会保障でも自公政権が広げた“傷口”をさらに広げる措置や計画を打ち出しています。民主党が「廃止する」と公約した後期高齢者医療制度は高齢者差別の仕組みを温存した新制度に看板の掛け替え―。国保では国庫負担を大幅に増やすと言っていたのに実行せず保険料を値上げ―。介護保険でも給付縮小・利用料値上げの計画―。年金支給額を6月から減額し、さらに支給開始年齢のいっそうの繰り延べも検討する―。

 法人税減税や証券優遇税制で大企業・大資産家には減税をばらまく一方、消費税を増税し社会保障を切り捨てるやり方は退場を宣告された自民党政治そのものです。

 米国が中心の環太平洋連携協定(TPP)への参加に向けた動きもそうです。民主党は09年の総選挙前に発表した声明で「先進国で最も開かれた農林水産物市場となっている現状を踏まえ、FTA(自由貿易協定)交渉においては、農林水産物に関して米など重要な品目の関税を引き下げ・撤廃するとの考えを採るつもりはない」と表明しています。

 TPPはすべての関税をなくし、金融、保険、医療、労働、環境や官公需まで対象に「自由化」を進める枠組みです。それへの参加は明白な公約破りです。食料自給率が先進国で最も低く、暮らしと権利を守るルールが弱い日本で農産物の関税をなくし、ルールを引き下げることには何の道理もありません。

 09年の総選挙で民主党は「国民の生活が第一」という言葉を最大の公約に掲げました。米国と財界いいなりの自民党政治の根幹にメスを入れる姿勢がないという決定的な弱点はありましたが、ともあれ暮らしに寄り添った「対決軸」を持っていました。ところがいまや民主党政権は、国政の焦点の問題で国民への約束を踏みにじり続け、みずから自民党政治との「対決軸」を葬り去っています。

古い政治の転換こそ

 党利党略での対立はあっても、政策では旧来の自民党政治への翼賛が明らかです。労働者と中小企業、暮らしを犠牲にして財界・大企業の利益に奉仕し、米国に追従する古い政治の転換が、いま改めて求められます。

 国民の暮らしを守るためには、まず社会保障を削減から拡充に切り替え、財源は消費税ではなく大企業・大資産家への行き過ぎた減税の是正で生み出すことです。そうしてこそ暮らしと経済・財政の立て直しに道が開けます。





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