2011年2月9日(水)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
菅首相がさかんに、「最小不幸社会」をめざすと語っています。首相の話から、「最大多数の最大幸福」という言葉を思い起こした人は多かったようです▼18世紀から19世紀のイギリスの思想家、ベンサムの考え方です。本紙の経済面でも同僚記者が、ベンサム説を紹介しながら首相に次のように問いかけています(1月29日付「こちら経済部」)▼幸福を大きくするのでなく不幸を小さくするというのでは、志が小さすぎないか。所得が低い人ほど負担の重い消費税を増税するようでは、「最大多数の最大不幸」になってしまうのではないか…▼“個人の幸福の集まりが社会の幸福であり、社会全体の幸福を最大に”というベンサム説。ここで論じるのは手に余りますが、対して菅首相は唱えます。なにが幸福か人それぞれだから、政治の役目は、誰にももたらされる貧困や戦争の不幸を最小にすること▼といいつつ“もっと軍事力を”と説き、人々に重い負担を迫る。わけが分かりません。「国民総幸福」(GNH)という言葉を思い出した人もいるでしょう。GDP(国内総生産)で表す経済力だけでなく、生態系、文化、経済の公正さなど人間の幸福度で豊かさをはかろう―。ブータンから出た考え方、といわれます▼たしかに、幸福は人それぞれかもしれません。しかし首相、わが憲法を忘れませんように。「幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」(13条)