2011年2月9日(水)「しんぶん赤旗」
主張
普天間基地「移設」
地位協定を絡めた脅しやめよ
菅直人首相が米軍普天間基地の名護市辺野古への「移設」を押し付けるために日米地位協定見直しを絡めて、「移設の進展を踏まえつつ検討していきたい」と国会でのべています(1月末の国会答弁)。県内「移設」に反対する県民への露骨な脅しであり、反発が広がっているのは当然です。
沖縄県民は普天間基地の「移設」ではなく、撤去を求めています。揺るぎのない県民総意を突き崩すために、別問題の地位協定見直しを絡めるなど言語道断です。県民への卑劣な脅しをやめ、撤去の声にこそ応えるべきです。
県民総意変えられない
普天間基地は米国防長官でさえ「世界一危険」と認める基地であり、即時閉鎖・撤去以外にないというのが県民の要求です。「移設」とは危険と痛みを移すことです。長年基地の重圧に苦しめられている県民が「移設」に反対するのは当然です。
普天間基地の閉鎖・撤去と県内「移設」反対が揺らぐことのない県民総意であることは、昨年来の県民大会や地方選挙の結果をみても明らかです。民主党政権が進める「日米合意」にもとづく県内「移設」の路線が完全に破たんしているのは明白です。
菅政権は、「移設」に向けた動きを前に進めるために、昨年12月の沖縄知事選以降、菅首相をはじめ関係閣僚が相次いで沖縄入りし、経済振興や負担軽減策を絡めながら普天間「移設」の画策を強めてきました。しかしその結果が県民の理解を得るどころか反発を強めただけになっているのは明らかです。
菅首相が地位協定見直しを絡め県民を脅すことによって「移設」を押し付けようとするのは、政府のなりふりかまわぬ姿勢を示したものです。
地位協定は、日本に駐留する米軍にさまざまな特権を認めています。地位協定の規定では、米兵が「公務中」に起こした犯罪は日本人が被害者でも日本が裁くこともできず、「公務外」でも日本が起訴する前は日本が逮捕・拘束もできません。地位協定をそのままにしておいては米軍の蛮行から県民・国民の命も安全も守れないことは、1995年の米兵による少女暴行事件をみても明らかです。
米軍の横暴に苦しんできた県民が地位協定見直しを強く求めているのは当たり前です。だからといってそれを「移設」に絡め、「移設」を押し付けるテコにするのは間違っています。
県民が切望する地位協定見直しを県民総意をくつがえすテコにするというのは、まさに沖縄県民全体の気持ちをさかなでするものです。それこそ、米国への追随を深める菅政権の異常な姿勢をうきぼりにするだけです。
日米合意の白紙撤回を
菅政権は普天間基地「移設」の押し付けをやめるとともに、地位協定については昨年の参議院選挙マニフェストでも約束した通り、米政府に改定を提起すべきです。
いま重要なのは基地負担の「軽減」や地位協定の見直しに絡めて、「移設」に反対する県民を脅すのではなく、「移設」を再確認した日米合意そのものを白紙撤回することです。そうでなければ民主党政権もかつての自民党政権同様、いったいどこの国の政府かと国民に批判されるのは免れません。
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