2011年2月8日(火)「しんぶん赤旗」

トヨタ子会社誘致に500億円

少ない地元雇用 大半が非正規

工業団地・高速道・港整備…至れり尽くせり

宮城県


写真

(写真)セントラル自動車の敷地の手前には「この地から世界へ向けてトヨタ車をつくりますよろしくお願いします」と記されている看板が掲げてある

 巨額な税金を投入して企業誘致をすすめる宮城県では、それに見合う雇用が確保されていません。

 宮城県の誘致で神奈川県から仙台市の北にある大衡村(おおひらむら)に移転したのが、トヨタの100パーセント子会社、セントラル自動車です。1500人を超える労働者が働く新本社工場(44ヘクタール)は、1月6日から操業を開始し、海外輸出向けの小型自動車を生産しています。

 自民党の県議から2005年に県知事になった村井嘉浩知事は「富県共創! 活力とやすらぎの邦(くに)づくり」を県政運営の理念として掲げ、「富県宮城の実現」をめざして企業誘致に力を入れています。10年4月には「自動車産業振興室」を新設しました。

 宮城県は、同社を誘致するために500億円を超える税金を投入しています。同社工場が建つ北部第2工業団地の再整備、同工業団地に直結する東北自動車道・大衡インターチェンジ(IC)の建設、大衡ICから国道4号までの4車線化、周辺の国道4号の4車線化拡幅工事、仙台港の自動車プール拡張などの費用のほかに、企業立地奨励金、固定資産税などの優遇措置を行っています。

 県が策定した「宮城の将来ビジョン」(2007年度から16年度までの10年間)は、第2期計画期間にあたる10年度から13年度の4年間で企業立地件数を160件とし、1万人の雇用創出を掲げています。

 県によれば、セントラル自動車と県の立地協定には「従業員はできるだけ地元から雇用してほしい」との趣旨が盛り込まれています。

正規は17人

 同社は10年度に限ってみると、12月現在で252人を採用しました。宮城県内の採用数は、正規雇用で大卒者が4人、高卒者が10人、中途採用が3人の17人のみで、ほかは3カ月更新の期間工が107人でした。残りの128人は派遣社員で、「派遣会社からの採用のため県内、県外かは不明」としています。大半が無権利で低賃金の非正規雇用労働者です。来年度の採用について同社の担当者は「生産台数の動向をみて採用人数を決定する」と話しています。

 宮城県高等学校・障害児学校教職員組合の野中康浩書記長は、「私たちがセントラル自動車に要請した際、昨年春の採用は1桁と話していました。県から多額の投資を受けた企業として就職状況が厳しい県内の高校生の雇用の受け皿になっていない」と語ります。

 県と仙台市が10年前に約40億円を出して誘致した電子関連産業「東北セミコンダクタ」は、11年に完全撤退しようとしています。隣接する栗原市や亘理町(わたりちょう)でも撤退、進出取りやめなどが相次いでいます。

 村井知事は、これまでの企業誘致で5000人を超える雇用拡大ができたとのべましたが、日本共産党県議団の追及により、これらの大部分は移転前の自治体からの異動であることが判明しました。

県政転換を

 党県議団の横田有史県議団長は次のように語ります。

 「宮城県は高すぎる国保料(税)の滞納世帯割合が全国トップ、乳幼児医療費助成は全国最低水準、今春卒業予定の高校生の就職内定率は全国ワースト3位です。巨額の税金をつぎ込んだ企業誘致も、それに見合った雇用の創出に結びついていません。これでは、応援する相手がさかさまではないか。企業誘致に特化した県政から、くらしや福祉最優先で県民の懐をあたためる県政への転換が求められています」(伊藤悠希)

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