2011年2月7日(月)「しんぶん赤旗」

主張

TPPと日米同盟

東アジアの関係強化こそ


 環太平洋連携協定(TPP)参加問題が国会の焦点となるなか、菅直人首相は先月、スイスで開かれた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で講演し、TPP参加は「6月をめどに結論を出す」と述べました。「日本開国」を大方針に掲げた講演での発言で、TPP参加を“国際公約”したものと受け止められています。

同盟強化の一環

 首相が同時に強調したのが「日米同盟基軸」です。欧州にまで出掛け、世界から集まった聴衆に“アメリカべったり”外交を吹聴する首相の国際感覚にあきれます。しかし、TPP参加と「日米同盟」を一体化させた首相の認識は、TPPの本質を示しています。

 TPP交渉は米国が主導し、アジアの協力強化や地域統合とは別物です。しかも、関税撤廃をはじめとする徹底した自由化では、受け入れられない国があるのが当然です。東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国のうち参加を表明したのは4カ国で、結果的にASEAN統合にくさびを打ち込む形になり、東アジアの協力強化に対立するものとなっています。

 日本を含む東アジアでは長年、域内の政治的、経済的な協力強化が議論されてきました。その核が、仮想敵を持たない平和の地域共同体として前進するASEANです。「ASEAN+3(日中韓)」を基本にして、経済分野では通貨危機に際して外貨を融通しあう「チェンマイ・イニシアチブ」や食料危機に備えた備蓄などの協力が進んでいます。

 こうした流れがあるからこそ、鳩山由紀夫政権当時の岡田克也外相は、同政権のめざした「東アジア共同体」を「ASEAN+6(日中韓とオーストラリア、ニュージーランド、インド)」とし、米国は入らないとの考えを示さなければなりませんでした。

 ところが菅政権は、唐突にTPP参加とそれによる米国との経済的一体化を打ち出し、東アジア共同体についての議論を断ち切ってしまいました。

 民主党政権の転回ぶりには米政権の意向が反映しています。輸出倍増をめざすオバマ米大統領は2009年、TPPで「21世紀の貿易協定に値する高い基準を持つ地域協定を形成する」と、交渉主導の意思を明らかにしました。

 米政権は、米国を除いた「東アジア共同体」の進展に危機感を抱いていました。金融・経済危機で大きく傷ついた米経済を復活させるには、東アジアの高い成長を吸収しなければならず、米国の利益に沿って経済統合を進める必要があると考えているからです。

 米国がアジアへの米軍の前進配備を重視し、日本に米海兵隊普天間基地の沖縄「県内移設」を押し付けるのも経済と一体です。「日米同盟」にどっぷりつかる菅政権は、同盟強化の一環としてTPP参加を求めているのです。

平等・互恵の経済関係を

 TPP新規参加には米議会の承認が必要になるなど、TPPは米国の利益を最優先するものです。日本では、その自由化は農業に壊滅的打撃となるとともに、国民生活の隅々まで影響を及ぼします。

 あるべき地域統合の道は、「日米同盟基軸」のTPPではなく、日本の自主性を確保し、東アジアでの協力を通じて平等・互恵の経済関係を発展させることです。





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