2011年2月7日(月)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
1923年といいますから、いまから88年前の話です。東京で起こった「三河島事件」が、世間を驚かせました▼「一月場所の初日前、力士会が協会に養老金の倍額支給などを要求し、十両以上の力士と行司の計七十九人が三河島の工場に籠城(ろうじょう)した事件」です(澤田一矢編『大相撲の事典』)。養老金は、退職金にあたります▼「本場所の休場もやむをえない」と、意気込む力士会。解決を遅らせ、開場にこぎつけたい協会。横綱と大関が土俵にあがったものの、わずか7人では相撲になりません。警察は労働争議とみなし、警視総監が調停にのりだします▼“養老金を五割増に”。警視庁の案で、両者が手を打ちます。一月場所つまり当時の春場所は、あらためて開かれました。たたかう力士たちは、9年後にふたたび現れます。32年のやはり1月。出羽一門の関取32人が十の要求を掲げ、東京・大井町の料理屋「春秋園」にたてこもります▼相撲協会の会計を明らかにする。入場料を下げ、もっと大衆が相撲をみられるようにする。力士の生活保障を…。賛同する力士が相次ぎ、彼らは「新興力士団」「革新力士団」をつくり、独自の興行をもちました。春場所も1カ月延期させた、「春秋園事件」です▼いま八百長疑惑にゆれる相撲協会が、春場所の中止に追い込まれました。月給百数万円の十両力士が無給の幕下に落ちまいと、事もあろうに星を融通しあう八百長もあるとか。不正。格差。待ったなしに、新たな改革の春よ来いの相撲界です。