2011年2月7日(月)「しんぶん赤旗」
国保滞納差し押さえ倍増
分割納付中に 年金・子ども手当まで
生存権脅かす非道
06年度→09年度
国民健康保険(国保)の保険料(税)を払いきれず滞納した人の「財産」を、容赦なく差し押さえる動きが全国の自治体に広がっています。厚生労働省の調査では、2009年度に全国で実施された差し押さえの件数は18万2583世帯に上り、06年度と比べてほぼ倍増しています。
国保の保険料の収納率は08年度に初めて9割を切りました。09年度も88・01%に続落し、過去最低を更新しています。保険料が年々高くなり、払いたくても払いきれない世帯が増えているのが実情です。
ところが政府は保険料引き下げの手だてを講じないばかりか、「収納率向上」の取り組み状況を毎年示し、自治体を競わせて過酷な徴収に駆り立ててきました。06年度以降、滞納者の財産調査、財産の差し押さえ、差し押さえ物件のインターネット公売などを実施する自治体が急増しています。(表)
苦しい経営状態の中でも国保の保険料を分割納付してきたのに、滞納分を全額払わなければ2人の子どものための学資保険まで差し押さえると大阪市から通告された―。日本共産党の志位和夫委員長は2日の衆院予算委員会で、大阪市で飲食店を経営する男性の例を突き付け、政府の姿勢をただしました。
こうした非道な差し押さえが全国で横行しています。
国保の保険税滞納分を月3万円ずつ返済してきたのに、振り込まれた年金を全額差し押さえられた(群馬県前橋市)。銀行口座に振り込まれた給与、子ども手当、国からの訓練・生活支援給付金などを予告なしに100件差し押さえ、預貯金をゼロにされた人もいた(大分県宇佐市)。09年度に883世帯の預貯金、給与、年金など2億2581万円を差し押さえた(島根県の21市町村)―。
自治体と面談して保険料を分割納付してきた人まで差し押さえの対象にするのは、従来の対応を逸脱する異常事態です。給与・年金の生計費相当額や子ども手当などは法律で差し押さえが禁止されています。にもかかわらず、銀行口座に振り込まれた途端に「金融資産」とみなして差し押さえる脱法的手口まで広がっています。生計費を奪い、生存権を侵害するやり方です。
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