2011年2月6日(日)「しんぶん赤旗」
主張
集中検討会議
中身も顔ぶれも自民と「一体」
社会保障と税の「一体改革」を議論する「社会保障改革に関する集中検討会議」(議長・菅直人首相)が5日、初会合を開きました。
4月までに年金など社会保障制度の「改革」案を、6月までに消費税を含む税制抜本改革の基本方針をとりまとめるとしています。
社会保障切り捨て路線
菅首相は昨年の参院選で「消費税率10%」への増税を打ち出し、国民の批判を浴びて民主党は惨敗しました。そこで、今度は消費税増税を社会保障「改革」と「一体」で提起し、“社会保障のためだから”と印象付けて国民の批判を弱めようという狙いです。
しかし、現に民主党政権が進めていることは、自公政権がつくった社会保障の「傷口」を広げるような冷たい切り捨てです。
後期高齢者医療制度では年齢による差別の仕組みをそのまま残し、低所得者への保険料軽減措置の縮小や70〜74歳の窓口負担の引き上げを図るとしています。保険料が高すぎて払えないために医療を受けられず、命を落とす悲劇が後を絶たない国民健康保険でもそうです。民主党政権がやったのは、市町村が実施している一般会計からの国保会計への繰り入れをやめ、「保険料の引上げ」に転嫁せよという通達を出すことでした。
後期高齢者医療制度は廃止、市町村国保の赤字には9千億円の予算措置を取ると明言した民主党自身の公約とは正反対の、国民への裏切りです。これらの裏切りを根本から改めない限り、政権の社会保障政策に対する国民の信頼を取り戻すことはできません。
社会保障を切り捨てる一方、大企業・大資産家には法人税を減税し証券優遇税制を延長してバラマキを続けながら、庶民には増税を迫る―。自公政権が「骨太方針」で強行し、国民から厳しい審判を受けたやり方そのものです。
この中身にしてこの顔ぶれ―。「集中検討会議」を実際に取り仕切るのは、議長補佐の与謝野馨社会保障・税一体改革担当相です。
与謝野氏は小泉内閣の経済財政相として、社会保障費の自然増を毎年2200億円削減する「骨太方針」(2006年)をとりまとめた責任者です。自民党では財政改革研究会の会長として、医療・介護を抑制する方針とともに「消費税率10%」を明記し、国民に犠牲を求める報告書(07年)をつくりました。
今回の「一体改革」の論点にも社会保障費の自然増の抑制を挙げています(「日経」5日付)。
自公政権で厚労相に就き、女性を「子どもを産む機械」と言って批判を浴びた柳沢伯夫氏も「集中検討会議」のメンバーです。かつて柳沢氏は自民党税調会長も務め、与謝野氏とは消費税増税路線の盟友です。「日本の身の丈レベルに社会保障給付を合わせる手だても必要だ」とのべて景気低迷に合わせた給付削減を求め、消費税率は「15%近く」を主張しています(「毎日」1月31日付)。
大企業に応分の負担を
「一体改革」と言いますが、これでは中身でも顔ぶれでも、自民党の社会保障削減・消費税増税路線との「一体」化です。
いまやるべきなのは社会保障を削減から拡充に転換すること、10兆円規模に上る大企業・大資産家への行き過ぎた減税を正して応分の負担を求めること、軍事費に大幅削減のメスを入れることです。