2011年2月5日(土)「しんぶん赤旗」

「格付け会社」のでたらめ評価

世界的金融危機の一因

消費税増税の口実にも


 米国の大手格付け会社、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が1月、日本国債の格付けを引き下げたことが議論を呼んでいます。しかし、格付けの公正さには以前から疑問が持たれています。不透明な格付けは2008年以降の世界的金融危機の一因となりました。いま世界で格付け会社に対する規制が強まりつつあります。(山田俊英)


 格付け会社の仕事は債券の信用度を格付けすることです。利払いが遅れたり、元本の償還ができなくなるようなことがないか―債券を発行する企業の収益力や財務状況、国債なら国の経済状況にもとづいて判断し、上からトリプルA、ダブルAなどとランクを付けます。

 仕組みが複雑な債券が増え、どれが安全か、プロの投資家でも判断がつきにくいため格付けに頼ることが多くなります。

 圧倒的影響力を持つ格付け会社は米国のムーディーズ、S&Pの2社です。両社あわせたシェアは世界の格付けの約80%といわれます。

発行企業に甘く

 しかし、格付け会社は民間企業です。格付けは一民間会社の意見にすぎません。格付けがどのような審査の結果であるのかも公表されません。

 しかも格付け会社は格付けされる債券を発行する企業から依頼を受け、手数料をもらって格付けします。当然依頼主の企業に甘くなります。

 01年に起きた米エネルギー大手エンロン倒産事件では格付け会社がエンロン経営陣の言うことをうのみにし、同社の経営状態を調査しなかったことが米議会で批判されました。

 世界金融危機の引き金を引いたサブプライム・ローン危機では、リスクの高い金融商品に高い格付けを与えるため、格付け会社が投資会社を手助けしていたことが事後に判明しました。

 1997年のアジア通貨危機では格付け会社が過剰反応してアジア諸国に対する格付けを短期間に急激に引き下げ、混乱を拡大したと批判されました。

 世界的金融・経済危機を受けて毎年開かれるようになった主要20カ国・地域(G20)首脳会議は格付け会社に対する規制強化を次のように打ち出しました。

規制強化の方向

 「格付け会社は登録を含めた規制監督制度の対象となるべきだ」(08年ロンドン・サミット=金融システムの強化に関する宣言)

 「格付け会社に対して透明性を向上し、質を改善し、利益相反を避けることを求める」(10年トロント・サミット宣言)

 欧州連合(EU)、日本は格付け会社の登録制を導入。米国は10年7月に成立した金融規制改革法で格付け会社への規制を強化しました。

格下げ妙に即応

 S&Pは日本の財政赤字を格下げの理由に挙げました。確かに日本の財政赤字は悪化しています。問題は格下げのタイミング。与謝野馨経済財政担当相は国債格下げの後、消費税増税を「早くやれという催促だ」とあからさまに語りました。格付けを利用した世論誘導です。

 埼玉大学の相沢幸悦教授は「消費税率の引き上げについて政府は6月までに結論を出すという。通常国会冒頭という時期での国債格下げは妙に即応している」といいます。





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